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表と裏の狭間には 最終話―エンディング―

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むしろ重火器の類と言ったほうが近い。
霧崎平志の読みは正しかった。
さすが、父親といったところか。
「それにしても、きったねぇマネしやがんなぁ。」
事前情報があり、時間もあったならば、準備する事は容易い。
マシンガンの状態を確認しつつ、周囲に目を配る。
さっきの爆撃で、オレが警戒しているのはバレたようだし。
向こうも策を練ってくるだろう。
「だが。」
オレの後ろの女を守る。
その目的がある以上、オレは殺されない。
敵の頭が見えた瞬間、マシンガンを放つ。ついでに、階段脇の通路の天井へRPG-7を撃ち込み、天井を崩して道を塞ぐ。
オレの後ろでは、ずっと銃声が鳴り響いている。
ゆりが戦っている音だ。
その音を背に、オレは戦う。
決して振り返らない。
オレは、ゆりが戻ってくると知っているから。
ゆりは、必ず戻ってくる。
それを信じて、オレはここに立つ。
ゆりは、殺させない。
例え何十人何百人と来ようが、それを皆殺しにするだけだ。
今更百人や二百人、最早どうということもない。
「なあ、ゆり。」
オレは、自嘲気味に呟いた。
「こんだけすりゃ、お前は振り向いてくれるか?」
言ってから、首を振った。
なんだそれは。
オレはいつから、振り向かせるためにこんなことをするようになったのか。
知っている。最初からだ。
だが、それだけじゃなかったはずだ。
階段の部分に手榴弾を投げ込む。
これでまた少し時間が稼げるだろう。
だが、敵が沸いてくる場所は階段だけではない。
正面奥の扉からも、敵は出てくる。
マシンガンで威嚇しつつ、RPG-7に弾を挿す。
こっちはあまり無駄使いは出来ない。
「さあ、どうした?もっと来いよ。全員しっかりきっかり徹底的にぶっ殺してやらぁ!!」
ゆりの命を狙った時点で、貴様らに生存の選択肢など、存在しないのだ。
待ってるからな。ゆり。

「くっ!」
「どうした?威勢の割には随分と弱ぇじゃねぇか。」
あれからずっと、あたしと霧崎は戦闘を続けていた。
霧崎は銃を必要としないらしく、飛び道具を使わない。
代わりとばかりに、大振りのダガーを使う。
あたしがこれでもかとばら撒く弾丸は、持ち前の頑丈さで受け止めてしまい、その隙に接近し、あたしを殺そうとしてくる。
斬りつける場所は、心臓、頚動脈、大腿部など、どれも即死しかねないばしょばかりだ。
「チッ!!」
引き金を引く。
軽機関散弾銃は、散弾を無数にばら撒く兵器。
並みの人間ならとっくにミンチになる威力だ。だが。
「同じことのくり返しで勝てるとでも思っているのか?」
だが、引き金を引くコンマ数秒前の時点で、霧崎は後ろへ下がっている。
至近距離で当てれば、霧崎の肉体といえどダメージを与えることは出来る。
だが、一定距離離れられてしまえば、威力の減衰が始まる。
散弾という特性上、銃弾それ自体に質量はほとんどない。
空気抵抗によって推進力が落ちてしまえば、一般の人間は余裕で殺せても、霧崎ほどの強度があると、ダメージの一つも与えられない。
弾丸は、カラカラと空しい音を立てて甲板に落ちるばかり。
銃弾が途切れると、霧崎が駆けてくる。
あたしは、空になった弾倉を取り出し、新しい弾倉に交換する。
交換には一秒もかけない。
だが、霧崎にはその一秒未満の時間で十分なようだ。
一気に間を詰めると、手に握ったそのダガーで、あたしの首を刈ろうとしてくる。
それをかわしても、霧崎はその頑丈な肉体を生かした打撃で攻撃してくる。
その拳に始まり、肘鉄、膝蹴り、回し蹴り。
体格で劣るあたしは、それらをどうにかかわしながら後退するしかない。
一応、ある程度の格闘戦は可能だが、体重差の問題で不可能だ。
しかも、あたしは今、巨大な機関銃を装備している。
身軽さを要求される格闘戦など、出来るわけもない。
「…………ッ!!」
一瞬の隙を突いて、引き金を引く。
「あっぶね………!?」
今までどおり霧崎は後ろに下がったが、直後に横へ飛んだ。
あたしはそれを追うように銃身を移動させる。
それは今までの散弾とは違う。
船の甲板や壁に当たったそれらは、ボス、ゴスッといった鈍い音を立てながらめり込んだ。
「……スラッグまで撃てるのか!」
「まあね。」
霧崎が離れたことを利用して、弾倉を交換、更に追撃する。
今度もスラッグ弾だ。
「チィッ!」
スラッグならば、ある程度離れていてもダメージは通る。
霧崎はそれを知っているのだろう、無闇に突っ込んでくるようなことはしない。
賢明な判断だ。
なぜなら、ただのスラッグではないのだ。
初弾が着弾してから十秒ほど経過した時だ。
ドガン!と。
めり込んだ弾丸が、爆発した。
「!?」
流石に予想外だったのか、表情を驚愕に染める霧崎。
爆発は最初の一発だけじゃない。
次から次へ、着弾した順番に爆発して行く。
ドドドドドドドドドド!!と。
「くっ、これはっ!?」
「あたし特製の時限式爆発弾よ。焼け死になさい!!」
甲板は、程なく爆炎と煙に包まれた。
あたしは素早く弾倉を普通の散弾に取り替えると、煙の中に飛び込んだ。
不意打ちで仕留める!!
「!?」
だが、霧崎がいると踏んだ場所には、霧崎はいなかった。
「惜しかったな。もうちょっと後ろだ。」
背後からダガーが振り下ろされる。
「予想済みよ!!」
霧崎平志が、いかに人間を超えた頑強な肉体をしていようとも、弱点はある。
それは、目だ。
眼球だけは、強化できない。
散弾を撃っていた時も、霧崎は目を重点的に庇っていた。
この至近距離で眼球に銃弾を撃ち込めば、それは脳まで届いて決定打となるだろう。
だが、この密接距離では軽機関散弾銃は取り回しが不可能。
どうするか。
さっきのデリンジャーを構える。
ゼロ距離でも扱える、むしろゼロ距離のための拳銃。
霧崎の目へ向け、引き金を引いた。
「甘いな。」
だが、霧崎はナイフの起動を少し逸らすと、デリンジャーの銃身を思い切り殴った。
その衝撃だけで銃身はずらされ、弾丸は的外れの方向へ飛んで行く。
……装填したのは一発。
「中身は一発だったな。なら、これで終わりだ。」
霧崎は、切上げるようにあたしの首筋を狙っていた。
あたしにそれを避ける術はない。
「うわぁあああああああああああああああああああああ!!」
それでも、あたしは、引き金を引く。
無駄なことを、と言いたげな目をする霧崎。
その目に向かって、引き金を引いた。

「お前、一人で行ってくれないか?」
「……待つのか?」
「ああ。待つさ。」
「そう。頑張れよ。」
そんなやり取りをした後、俺は煌と分かれて、一人で船内を探索していた。
不思議なことに、敵とは全く出くわさなかった。
その代わりとばかりに、他の階から銃撃の音や爆発音が聞こえてきたりする。
その音を聞きながら、ただ進む。
訓練で習った通りに周囲を警戒し、常に銃を構えながら進む。
『アーク入隊以降、あなたが銃を撃ったのは、訓練所で的を相手にしたときのみですわよね。それ以降、定期訓練のとき以外は、一度も発砲しておりませんわね。人に向けては勿論、施設外での発砲はありませんわね。そんなあなたに、このわたくしが撃てますかしら?』
突然、頭の中に響いてきたのは、あの忌まわしき女の声だ。