日常の中の極限
「……それで、神様が俺なんかに何の用ですか? 見られてるとしにくいんで、できれば帰っていただきたいのですが」
確認できるのは声だけで、姿は見えていないのだが、それでも見られていると思うと躊躇してしまう。
汚産に万全を期すため、ここで憂いは断っておきたい。
しかし、
「ということは、出産の決意ができた訳ですか」
「……心の準備はまだですが、もう肛門括約筋(ディフェンシブ・フォートレス)が限界なんです」
「なるほど」
渾身の言葉にも、神様は一向に出て行く気配がない。
いよいよ砦の防御力が無くなってきた。
このままでは汚産の瞬間を神様に閲覧されるという、非常にマニアックな羞恥プレイをさらすことに……。
畜生、俺が何をしたっていうんだ!
この世には神も仏もいないのか!……目の前にいるけどね!
「ふふ。私にそんな趣味はありませんよ。安心してください。私はあなたを助けに来たんです」
俺の心配をよそに、そう言う神様。
「助けに……?」
「はい。あなたは毎日学校のトイレを掃除しているでしょう。そのご褒美です」
そういえばしてるな。……先輩が無駄な労力を使わなくていいように。
「これをどうぞ」
いつの間にか、目の前に小さな箱が浮いていた。