日常の中の極限
思えば十六年は長いようで短かった。
小学生の頃幼馴染に振られ、中学では美人の先生に振られ、そして今日はテニス部のマネージャーに振られ……見事に、彼女いない歴=享年の人生。
生物学的に言えば、ただ『自然淘汰』されただけの人生なのだろうな……。
だが、彼女がいなくたって、俺を必要としてくれる人はたくさんいたじゃないか。
テニス部の竜司、淳、恭太は、梨々奈に振られて意気消沈していた俺に、
「お前の冗談がなきゃテニス部もつまんねぇよ」
「お前は俺たちに必要だ」
「だからめげるなって!」なんて声をかけてくれた。
顧問の溝江洋平先生は、
「お前はベンチで一番声を上げて応援してくれとる。勝利の二割は、応援で決まるんや。
来年再来年も、お前がいれば心強いな。」と言ってくれた。
部長も、
「お前が居なきゃ購買部までの無駄な運動をしなきゃならんくなるんだ、辞めんなよ。」としきりに俺に言うし……
容姿は普通で、友達もそこそこいる……それが十分満足のいく日常じゃないか。
「俺は幸せだ。良い人生だった。」
俺は胸を張ってそう言いたい。今は腸が張っているが……。