日常の中の極限
「せ、先客だとぉ!」
そんな状況は想定外だった。もはやもう無理か……。いやまだ諦めるのは早い。
そう、もしかしたら入って長いのかもしれない。じきに出るに違いない。
そう信じて待とう。
そう決意した矢先、奇跡が俺の降り注いだ。
「カタッ」そうあの音だ。トイレットペーパーを巻き取るあの音。もうすぐ出ますよの合図。
「カタカタカタカタカタ」もうすぐ……
「カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ」もう……
「かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた」も……
「なっげーーーんじゃぼけぇええええ。さっさと出ろやーー。」
思わす叫んだ、わけではなく心の声だ。
男子高校生はそんなに勇敢じゃない。こんな状況でも、入ってるのがやくざだったらとか考えている。
声が届いたのかどうか、中から人が出てきた。その人を押しのけ俺は楽園へと向かった。
「神は俺を見捨てなかった。」
そう思った。
ズボンのベルトを外し、ふと右に視線を流す。そこで気がつく……。
「紙は俺を見捨てたのか……。」