ネクタイ猫
「あ、そうか。今は猫の塔野君だもんね」
「そうだよ、猫の塔野だ。文句あるか?」
おばちゃんは、くっくっくと笑いながらこう言った。
「だって、猫に変えたのは私だもの。わかるに決まっているじゃない」
「え、なんだって?お前が猫に変えた?」
あ、もちろんここまでは、ちゃんとした言葉で会話していた。
別に俺がニャンニャン鳴いていたわけじゃない。
レトロな黒いマントに同じ色の帽子や服を着ていると言えば、わかるだろう。
そんな奴との会話なんて、何でも有りだ。
「だって、何も考えないでのんびり休みたいって言ったでしょ?猫になって1日中のんびり日なたでお昼寝したり、散歩したり。きっと楽しいわよ」
「おいおい、そう言う意味でのんびりと言ったわけじゃないぞ。これじゃ遊びにだって行けやしない。この部屋から出ることだってままならない。」
「そうかな?猫用のドアはちゃんと開けてあるし、お留守番と言われても彼女が帰ってくるまで遊びに行くのは自由じゃないの?そうそう、彼女で良かったんでしょ?拾い主。」
そう言われて、内心どぎまぎした。
「い、いや・・別に誰でも良かったけど。って、やっぱりなんで猫なんだよ?」
「んもう、猫にしちゃったんだからしょうがないでしょ?犬と違って猫は自由気まま。好き勝手にしても怒られないじゃない?甘えれば抱っこしてもらえるし。ほらほら大好きな彼女に抱っこされるんだよ。考えただけでもワクワクしない?」
確かに、拾い犬だったら入れてもらえてもせいぜい玄関先か。部屋まで連れてこられるのは、やはり猫だったからかも・・