ネクタイ猫
その時、外から窓を叩く手が見えた。
ここはたしか2階だったはず。手なんか見えるはずがない。
でも「コンコン」と音もする。
机の縁まで行って窓からのぞいてみた。
「はぁ~い。おはよう。」って、パートのおばちゃんじゃないか!
「ねぇ、ちょっと塔野君、窓開けてよ。猫になったって窓くらい開けられるでしょ?」
俺は後ろ足で立って、肉球でガラスを押さえ少しだけ窓を開けた。
太めのおばちゃんなのにスゥッと部屋に入り込んできた。
・ ・・でも、なんか服装がレトロだ
「おい、なんだその服?へんてこだなぁ。それになんで俺の名前を知ってるんだ?」
「あら~、だって同じ会社だったじゃない?」
そりゃ、人間の格好をしていたらすぐにでもわかるだろう。
俺は今、猫なんだぞ。彼女だってわかっている。