ネクタイ猫
俺は彼女の部屋に一人、いや一匹取り残されてしまった。
彼女は実家に住んでいて、部屋は二階の南側の六畳の部屋だった。
南側に窓があってそこにくっつくように机がある。
そして机の右側にベッドが置いてあった。
とりあえず、ベッドに飛び乗ってみる。
わお!身体が軽いぞ!
枕元に畳んであるパジャマから彼女の匂いがする。
花のような甘いけど爽やかな匂い。
本来ならあそこが固くなるんだろうが、今はひげがヒクヒク動いているだけだ
そして自然にゴロゴロ喉が鳴っている。
ベッドの端から端まで歩いてみた。布団の感触が肉球に気持ちいい。
ベッドから、1mくらい離れている机に飛んでみた。
楽勝だった。
窓からは、街の様子が見える。家の前は駅に続く街路樹の道。
いかにも猫が捨てられてそうな道だ。
この道はいつも俺が通勤するのに使っている道である事に気が付いた。
「ここから俺の事見ていた。・・・なんてことは無いよなぁ。あはは」
そんなことがあったらうれしいだろうなぁと猫になった脳みそで考えていた。