読み違え&萌え心を揺さぶるシリィズ
萌え心を揺さぶる読み違え大和魂妄想仕様・その1
もうタイトルが…(苦笑)。
つめこみ過ぎだとか、崩壊してるとか、批判(あるいはツッコミ)を浴びたところで、暴走する妄想の前には痛く痒くもないのである。
さて、我が心を揺さぶるはヨーロッパ作品だけにあらず。日本にも(偏った)目で捜してみれば、そこかしこに美味しい作品は転がっている。
《萌え文学世界選手権》邦人代表トップバッターは、このお方。
寺山修司。
氏の作品と最初に出会ったのはいつだったか…実は、よく思い出せない。中学・高校の教科書で出遭った詩歌人は記憶にあるかぎりでは、谷川俊太郎、宮澤賢治、中原中也。
誰かの薦めだったのか、何かのアンソロジーに載ってたのか、鑑賞のきっかけはサッパリなくせして、氏の作品は気づくと私の胸に在った。たとえるならば、いつのまにか気になり出してた隣のクラスの男の子のように。
氏の作品は、少年・青年期を遠く置き去りにした壮年期に読むことで、哀愁と寂寞が際立つ仕掛けになっている――とは、数年前、古書店で手に入れた『寺山修司青春歌集』を読んでの所感である。
二度ともどらない過去であれば、いかようにも美化できるし、改ざんできる。だがそれは、記憶の上澄みだけのこと。胸底に沈む感覚までは、消すことも変えることもできはしない。氏の作品を読むと、我知らず沈めていた(もしくは隠していた)感覚がふと呼び醒まされて、どうにも苦しくなるのである。
今回、氏の短歌を紹介するにあたっては、3部に分けることとした。選択基準は言うまでもなく、私の独断・偏見・願望・妄想による。
第1部は《学校が舞台かつ少年が対象》の作品群。ランキング形式にすることも考えたのだが、順位付けが非常に困難だったため、早々に放棄した。
では、スタート。
***
◇みみずくの声きこゆる小さき図書館に耳きよらなる少年を待つ
◇わけもなく海を厭える少年と実験室にいるをさびしむ
◇またしても過ぎ去る春よ乱暴に上級生のシャツ干す空を
◇地球儀の見えぬ半分ひっそりと冷えいん青年学級の休日
◇田園の傷みは捨てて帰らんか大学ノートまで陽灼けして
◇理科室に蝶とじこめてきて眠る空を世界の恋人として
◇飛べぬゆえいつも両手をひろげ眠る自転車修理工の少年
◇一枚の羽根を帽子に挿せるのみ田舎教師は飛ばない男
最後に出てくる《田舎教師》について。ここだけ見れば明らかに対象は成人で、未成年ではない。となると、少年が対象の作品ではないのでは?
いやいやいや、本シリィズの趣旨を今一度思い出して戴きたい。
萌え心の目で見てみると――
サえない田舎教師をひっそりと、しかし熱っぽく観察する、イケてる不良少年がいる。
…妄想、万歳。
作品名:読み違え&萌え心を揺さぶるシリィズ 作家名:夏生由貴