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近未来のある日

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近未来のある日
浪戸 光
 こんな時代が来るなんて、誰が予想しただろう……。
 朝、妻が起こしてはくれない。そんな必要もない
 けたたましいベルの音に遅れ、ベッドがきしみ、音を上げ揺れる。寝入っていた私は揺れに気づき、目を開けた。体の筋肉が固まっているのを感じる。
 布団は、足元の装置を通り、庭に送られる。寒さが全身をつつみこむ。暖をとる布団はすでに吸い込まれてしまった。
 こうなると寝てなどいられない。
 これらを解除するには、私が部屋のドアを開けるしかない。まったく面倒な解除方法を考えつくやつがいたものだ。そのせいで私の惰眠は奪われてしまう。
 しぶしぶといった足取りで、目を半開きにしたまま、かろうじてドアに辿り着く。やっとのことでスイッチとなるドアノブをひねると、二度寝はさせないといわんばかりに、廊下が動き出し、私を洗面台へと連れて行く。
 歯を磨いている最中、重々しい機械音が、二階のほうから聞こえた。
 妻も、私に遅れてようやくお目覚めのようだ。半分寝たままの状態で運ばれてきた妻は、枕を抱えっぱなしだ。
「おはよう」
「んー、おはよー」
 目を開いた妻は、まだ少々寝むそうな声で言った。
「ところで、今日の朝食はなんだい?」
「今日は、パンの日だったわね。それにベーコンとスクランブルエッグだって言ってたわ」
 私の妻は、食事を作らない。いや正確には、どの家庭でも、もう作る必要はない。
 家の場合、家事の全てを人型アンドロイド、いわゆるロボットに任せている。今は家政婦モードに設定してあるため、家事全般をこなしてくれるのだ。
 
作品名:近未来のある日 作家名:浪戸 光