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恋色季節

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カラン―…

「2名様ですか?」

「はい」

「では、こちらのお席へどうぞ」

視線が痛いな。

にっしーが格好いいから仕方ないか…。

歩き疲れた足を癒すかのようにゆっくりと席についた。

「ご注文をお承りします」

「えっと…じゃあ俺は紅茶…ミルクで。紗希ちゃんは?」

「えと…オレンジジュース」

「かしこまりました。」

用意された水の氷がカランと音をたてた。

「店内はあったかいね」

「うん!
…あ、あたしにっしーが先輩だなんてしらなくて…敬語遣った方がいいですか?」

「フフ…今更じゃない?」

「…ありがと」

てか何でにっし―と会うことになったんだろ…。

神崎先輩の何かの野望?

首を傾げているとにっしーはフフッと笑った。

「どうやら神崎は俺に任務を課したみたいだ」

「…え?」

にっしーの瞳が鋭くなった。

「お待たせ致しました。」

注文したものが運ばれてきて、話しはそこでいったん途絶えた。

甘酸っぱい柑橘の味が口内に広がる。

「紗希ちゃん」

「ん?」

にっしーからよばれ、ストローから口を離す。

「君はもう少し強いと思ってたんだけどな」

「え…?」

「逃げるのはもうやめなよ」

「…っ!!」

理央のこと…神崎先輩伝いに聞いたのだろうか―…。

そういうにっしーの瞳が鋭くて、とてもじゃないけど直視できない。

「俺は耐えられないな…逃げるなんて」

「…だって!!もう会えないかもしれないっ!!だったら」

「会わない方がいい、なんていうのはただの屁理屈だと思う」

「…っ!」

にっしーの言う通りだ。私は、逃げてる…

「でも…っ!!もう会えないかもしれない…っ」

パタッと机に水溜まりができる。

喉の奥が異物でつまるような錯覚に陥る。

「会えないかもしれないんだよ…っ!」

「会えるかもしれない」

「…ぇ」

ふと見上げる視線の先に映った君は…優しく微笑ってた。

「俺が入院してて、絶望の淵に立ったとき…勇気づけてくれたのは誰だったかな?」

「あれは…っ」

「逃げだそうとしてた俺を引き止めたのは…他でもない紗希ちゃんだっただろ?」

思い出に浸るように瞳を細める。

『またやり直せるよ』

そういって潰れそうな俺を君は救ってくれた。

「だから、君だけ逃げるなんて卑怯だ」

「っ…ぅ…」

「泣かないで?別に君を責めてる訳じゃないんだ」

「ぅ…っちが…っ」

ただ、にっしーの言葉に凄く凄く押された―…。

「会えない、なんてまだ分からないだろ?」

「…っうん…っでも…怖いよ…っ」

そういうと、頭にポンと手が触れ、撫でられた。

「俺は逃げない。
理由はそれぞれ違ってもやっぱり結果を知るまでは諦めきれないんだ。」

「…っ!!」

その言葉を聞いた刹那、全身が疼いた。

「にっしー…ありがと」

「フフッ…どういたしまして。中村に飽きたらいつでも待ってるよ」

「にっしーの冗談はやっぱ面白いねっ。ごちそうさまでした」

そういうと、あたしは一目散に来た道を戻っていった。

理央に早く会いたくて―…。

「…冗談じゃないんだけどな」

仁科は微笑みながら紅茶を飲み、紗希の後ろ姿を愛しそうに見つめていた。

作品名:恋色季節 作家名:紗智