恋色季節
パコーン…
スパーン…
テニスデートの舞台はお寺。
何度も聞いたこのインパクト音。聞きなれて今はとても心地いい。
理央は鐘台の壁で壁打ちをしている。
あたしにフォームを教えるためだ。
「理央の浮気もの…」
「は…?」
突然何いってんのといわんばかりにこちらに振り向いた。
壁から帰ってきたボールを見ずにイナしている。
すごい…
「今アンタから聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど…」
「気のせい気のせい。」
「…このままここで鳴かそうか?」
「首がちぎれるまで謝らせて下さい」
目が本気だったよこの人…っ!!
またまた裕次郎パパさんとの遺伝子の繋がりを確認した紗希ちゃん。
生命の神秘ってスバラシイねっ!
「で、何で浮気?」
そういう理央に口をとがらせ、生意気口調で言った。
「ヒザのびすぎ、ヒジ曲げすぎ、肩開きすぎ、髪の毛長すぎ、へっぴり腰
…だっけ?」
昔椎崎さんと仲良く話してたの聞いたんだよ、コラ。
「だからあん時は見てらんなかったんだって…。あのフォーム」
「……ふーん」
「何その疑いの眼差し…」
一時じとーっと睨み付け、理央から拝借したラケットを手にとる。
「じゃあ、いきまふ」
「…誰?」
「紗希ちゃんだよ」
「…そ。」
あきれたように吐き捨てるような返答をし、理央は腰をおろした。
「…たしかアンダーサーブこうだよね…?うん、そうだよ。」
「ねぇ、頭大丈夫?」
哀れむような視線を向ける理央を無視し、壁打ちを始めた。