恋色季節
『それで朝は温かくてさ…なかなか起きらんないんだよね』
「あははっ!たしかに猫がくっついてたら起きづらいよね」
理央は優しい。
あたしが辛いときは、普段あんまり喋んないくせに、いっぱいその日のことを楽しそうに話してくれるよね―…?
気づいてるよ
「あ!で、お祝いは何がいい?」
そういった刹那、会話が中断された。
『そのことなんだけどさ…』
「うん!なになにっ?!」
出来るだけ声のトーンをあげて話す。
だって
凄く嫌な予感がするから…
『それ、再来年でいい?』
「…何…で?」
やっぱり…
『いいじゃん。再来年に2年分ちょうだい?』
「…っうん!」
怖くて、怖くてそれ以上は訊けなかった。
あたしは…臆病だ。
『ねぇ、ひとついい?』
「…ん」
声が裏返りそうになった。
『明日さ、デートしようよ』
「っ…!!」
『イイよね?』
「あたりまえじゃん!!」
あたしはつくづくゲンキンだなって思う。
理央の一言で、心が浮き沈みする。
「…テニス、教えてもらおっかな?」
きっと吃驚したよね?
『アンタテニス興味ないってゆってなかったっけ?』
ほら、声色がすごく驚いてる。
「だって誕生日なんだし、理央の好きなことやりたいよ」
『へぇ…アンタにしては気が利くじゃん』
「聖なる夜に十字架に君を張り付けようか」
『俺はキリストじゃないから』
そうして夜は更けていく。
それぞれが思いを背負って―…。