恋色季節
パーン…
パーン…
「あんまいい音でないぜよ」
「打つ力が弱すぎるからだよ…」
そういって理央はあたしの背後に回る。
あたしの腕に理央が右手を添え、左手は腰にいく。
「エロいぞ」
「何?こっちは教えてあげる立場なんだけど」
そういって添えられた左手に力が入る。
「ぅわ…っと!!何すんじゃーっ!!!!」
「もっと落として」
「…はいよ」
なんだかんだいって変なとこ真面目だよね
「もう少しラケットの端の方持って打ってみて」
「了解っ」
密着する君の体に愛しさを感じながら、暫く打っていた。
理央が凄く近いのにとても遠く感じた…。
嫌だな…あたしの悪い勘って、凄く当たるんだよ―…。
「紗希…そろそろ休憩しない?」
「…っうん…はぁ…っ」
ヤバい
疲れて息絶え絶えだ…
「何かさ…息づかいエロいね」
「いっぺん死ねよ」
ピタッ―…
「ちべて…っ!!」
空を見上げると
「…雪」
「ほん…とだ」
チラチラ降る雪は、私たちを濡らした。
「ねぇ、紗希」
―ドキン…
「何?」
怖い、怖い、怖いっ!!
「あのさ…
落ち着いて聞いてね?」
「…ん」
理央は腰を下ろした。
あたしもそれにならって理央の隣に腰を下ろした。
すると、何を思ったか理央は、あたしを力いっぱい抱き寄せた。
「…っ紗希…!!」
「っ…どしたの?」
苦しい…
リョーマ?
今までこんなに強く抱き締められたことはない。
凄く吃驚した。
まるで子供が…
大事なおもちゃとばいばいしなくちゃいけないときに…
だだをこねてるような…
そんな抱き締め方だった。
「紗希…俺っ…」
ドクン…
「理…央?」
そういうと、抱き締める力が弱まった。
顔が肩から離れ、私の目の前へとくる。
目が、合う。
「…俺
留学することになった…」
言葉が出なかった…
目の前が真っ白になって、頭の中は真っ暗になって、雪が頬に落ちてきた。
体温で溶けた雪水は、頬をつたい感情の印となって、地に落ちた―…。
To be continued...