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恋色季節

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「紗希…」

部屋の外から越前との会話の情景をみる心優。

「紗希…
神様ってなんでこんなに残酷なんだろね?」

中村の口からじゃ言えないだろうからって、直人に教えてもらった。

―…留学

「あたしの口からでも…言えるわけないじゃんか」

壁に体重を預ける。

頬に伝う、感情の印―…。

腕で視界を覆った。



†††††

「その冗談…
取り消すなら今だよ直人」

10月くらいだったな。

直人に用事があるって開眼され、やむを得ず紗希に理央の家に行ってもらった。

直人の用事が…こんなにも重大なことだったなんてね…。

その言葉を聞いた瞬間、心の奥がすごく冷えたような気がした。

「冗談なんて言わないよ。
中村は2月にアメリカに留学するんだ」

「…っ」

頭が真っ白になった。

またひとつ、紗希の笑顔が消えると思うと、涙が止まらなくなった。

†††††



壁に倒れこむ。

そうしないと

今のあたしじゃ、自分の体重を支えることができないから―…。

止まらない。

涙が

止まらない…」

「あたしはもう…っ
アンタの泣き顔は見たくないよぉ…!!」

紗希の笑顔はもう、なくしたくないんだ―…

だから、ごめん

中村がその口で言うまで、あたしは傍観者でいさせてください―…。

あたしの嗚咽は、紗希の優しい笑い声によってかきけされていった。

作品名:恋色季節 作家名:紗智