恋色季節
「紗希!…っ大丈夫?」
息絶え絶えの理央が、今にも倒れそうなあたしを抱き支えてくれた。
理央は鋭い眼光で彼女たちを睨みつけた。
「…俺がいつ…アンタと付き合ったって?」
「え?理央様、違うの?」
「…いい加減にしてよ」
「理、理央君…でもっ」
「早くどっか行きなよ…
俺がキレて行動に移す前にね…」
そういう理央の声色は、今までに聞いたことがない、黒くて低い、声だった―…。
流石に恐怖を感じたのだろう。
2人は逃げるようにこの場を後にした。
風が2人を撫でる。
「っ…理央…」
痛みが
ひいてく―…?
「大丈夫?何かされた?」
「だいじょーぶ」
さっきの理央からは考えられないほど、その顔は優しさに満ちていた。
だから笑って答えた。
「理央…理央…?」
「?」
「あたしは…何で此処に?」
「…っ紗希、記憶戻ったの?」
「……なんか、じわりじわりと」
そういう私に、君は
バカじゃないの?
そういって、半分涙を溜めて抱き締めてくれた。
風がまた、私たちを撫でた―。