恋色季節
現在は病院。
リョーマは部活を早退して、検診に付き合ってくれた。
「紗希ーっ!!」
「おー心優助
苦労をかけたのぅ」
「何どっかの天パ魔王とペテンちょろげの真似してんだよぃっ!!」
あたしの記憶が戻ったと聞きつけ病院に駆けつけてくれた心優。
ドカッという清々しい音とともに体当たりまがいに抱き締められた。
「よかったぁ…ほんとにこのこは心配させやがって…」
「ありがと、心優」
「声がかれるほど謝り続けて頂きたいねっ」
私の胸の中で絶叫し続ける心優は、密かに震えていた―…。
「バカだね、ほんと…紗希はバカだ!」
「はは…そうかもしんない」
本当にありがとう
私のために、心配してくれて、悩んでくれて、泣いてくれて本当に…
ありがとう
「異常はありません
よかったですね」
「お世話になりました」
担当医の先生に今までの感謝の気持ちをこめて会釈をした。
会計を済ませ、夕日に照らされながら帰路をわたる。
心優は用事があるからといって、先に帰っていった。
ま、心優の考えを読むなんて二足歩行並みに簡単だけど。
「り・お・君♪」
「Σ!!」
うわぉ…凄い反応の仕方。
「…もういっかいいってほし」
グイッ―!!
ちゅっ…
「っ」
「ウルサイ口は塞がないとね?」
「〜ッ!!!!」
悔しい…
あたしって頭イクね?
再び近づいてくる瞳を閉じた理央の顔。
その唇に人差し指をあてた。
「…何?」
「理央がいってくれないなら、もう隙なんか作ってやんない」
そういってイタズラに笑ってみた。
ふふ
勝った。
「…」
理央が急に黙った。
「リョーマ…?」
「…」
流石にここまで無言をきり通されると、不安になってくる。
「り…」
「…好きだよ、紗希。愛してる」
そういった理央の顔はテニスをしているときのように、とても真剣で
不覚にも
見惚れてしまった。
ちゅっ…
「…っ!!ちょ、リョーマっ!!」
「隙を作ってくんないんなら、作らせるまでだね。」
「…なにさ、キス魔が」
「まだまだだね」
そういって笑う君は
とても憎たらしかったけど
凄くかっこよかった。
「今度は倒れる前に相談とかしてね?」
「誰に?」
「…俺に」
「why?」
はぁ…っとため息をつく理央。
「アンタの彼氏だから」
「Σはぁっ?!!」
「…何?不満なワケ?」
そう不貞腐れる姿は
やっぱり同い年なんだなって
そう思える
だから嬉しくなる―…
「あたしも好きだよ…
よろしくね?」
理央は返答の代わりに、強く優しく、抱き締めてくれた―…。
―…