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夜の蜘蛛

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 目を覚ましたのは夕方だった。本当はもっと寝ていられたのに玄関のチャイムに叩き起こされたんだ。
 具合が悪いときは出なくていいと父さんから言われていたけれど、私はすぐに起き上がってスリッパも履かずに冷たい廊下を駆けてドアを開けた。
「あ……」
 そこに立っていたのは同じクラスの結城くん。パジャマ姿の私を驚いた顔で見ている。今さら着替えに戻るわけにもいかないから、平気な顔で「なに?」と聞いた。
「先生から頼まれたから」
 そう言って鞄から学校のプリントを取り出す。いつもなら幼なじみの真弓が来てくれるんだけれど、今日は真弓も風邪で休んでいるらしい。学級委員らしくテキパキと連絡事項を伝えてきた。
「……お母さんは?」
 帰り際に突然そんな無神経なことを聞かれて驚く。思わず睨んじゃったけれど、結城くんが去年転校してきたことを思い出す。そうか、知らないんだ。
「ちょっと出かけてるの」
 それだけ答えてドアを閉めた。

 結城くんはクラスの人気者だ。顔と頭が良くて運動神経も抜群で、男子への評価が厳しい真弓も認めるモテ男。正直言うと、私も少しドキドキしていた。
 でも、”待っている人”なんかじゃない。私は誰も待ってなんていない。
 急に寒気を思い出して、薄暗い玄関で震えた。

作品名:夜の蜘蛛 作家名:大橋零人