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夢ほころぶ頃

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今日の天気は雪。
昨夜からの積雪で居間から見える庭も真っ白に覆われていた。
若菜は、ソファーにゆったりと腰を掛け、膝から下をその前に置かれた炬燵の中に入れている。床に敷かれた炬燵の敷布団に座るのは、少しつらくなってきた。
体を冷やさぬよう、着込んだ服も少し動きを妨げた。
炬燵の天板に置かれたほうじ茶もぬるめになった。本当にすぐに冷めてしまう。
手を伸ばし、湯飲みを取り、ゆっくりと啜る。
やんわりとした温もりが喉から体に流れ込むのがわかる。
「ふう、暖かい」
湯飲みで手を温め、ぼんやりと微笑む。
菓子器のサラダ味の煎餅を半分、器の上で割るとゆっくり味わい食べた。
大人の若菜なら、バリバリと小気味良い音を立て二、三枚食べれば旨いだろう。
でも若菜は食べられない。食べないようにしている。
あまり塩分は摂取(と)らないようにしていたからだ。
若菜の夫は、休日ではあったが、学生時代の友人の結婚式に出席するため、朝から出かけてしまった。
同居している夫の両親も親戚への使いで出かけてしまった。
今日は、ひとりでまどろむ時間もありそうだ。
居間に差し込む日差しは暖かそうでうたたねを誘う。
まだ昼までには時間があるというのに、いくらでも眠れてしまいそうだ。
雪の庭にきらきらと舞う眩い光を見つめながら、そっと触れる。
若菜の中で息づく命。

作品名:夢ほころぶ頃 作家名:甜茶