舞うが如く 最終章 5~6
舞うが如く 最終章
(6)じゃじゃ馬と「野菊」
この時代、工女たちが働く生糸工場では、
多くの男衆が裏方として、また賄いとして雇われていました。
ほとんどの工女が嫁入り前の年齢のため、男女の接触は厳しく制限をされていたうえに、
ボイラーのある釜炊き場の周辺などは、すべての女人が立ち入り禁止にされていました。
ガラス窓越しに通過をする、石炭運びの男たちもまた、
工女たちの注目を集めることになりました。
糸取りの指先を休めることしないまでも、、娘たちは贔屓(ひいき)の男たちが
窓の外を通るたびに、身をよじり、頬を染めて愛嬌をふりまきました。
男たちもまた、それを充分に承知をしていました。
工場の前を通り抜けるたびに、逞しい胸をいっそうはだけて見せました。
さらに腕の力こぶを誇示して、闊歩するようにもなります。
作品名:舞うが如く 最終章 5~6 作家名:落合順平