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20日間のシンデレラ 第2話 お前は一体、誰なんだよ

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教室の入り口側の班の女子がひそひそと何かを話している。

女子生徒A 「出雲ってさ、何か急に雰囲気変わったよね」

女子生徒B 「あっ、それわたしも思った。 何か周りと違って大人っぽくなったっていうか。 勉強だって実はできるみたいだし何か見直しちゃった」

机の中から可愛らしいプロフィール帳をとりだす女子生徒。

池田花梨、井上夏美、佐々木恵子らをはじめクラスの女子のブロフィールがファイリングされている。

中にはプリクラを貼っているものもある。

女子生徒A 「わたし…………行ってくる」

女子生徒B 「えっ! ちょっと待ってよ、私も」

ばっと机を立ち上がり陸の方に向かう女子生徒二人。

机の上に置かれたファービーの口に指を突っ込みながらその様子を眺めている恵子。

先ほど中断されたミルメークの残りを飲んでいる陸。
      
女子生徒A 「いっ、出雲君!」

突然、横から声をかけられたのに驚き、またしても噴出しそうになってげほげほとむせている陸。

  陸  「なっ……何だよ」

女子生徒A 「あっ、ごめんね。 えっとよかったらこれを書いて欲しいなって……」

女子生徒の手から、切り取られた一枚のプロフィール帳が陸に渡される。

女子生徒B 「私のも書いて」

それらを受け取り、

  陸  「おう……ありがとう」

その光景を見てさっきまで魂が抜き取られたかのように元気がなかったのにも関わらず、

突然、我に返る清水。

清 水  「おいおい、何で陸だけなんだよ! なぁ、俺も書いてやるって」

女子生徒 「(二人同時に)あんたのはいらない」

再び体にどーんと稲妻が走ったかのように打ちひしがれている清水。

その二人に便乗して他の席からさらに二人の女子生徒が陸の元に現れて、プロフィール帳を書いてと頼みに来る。

あっという間に、女子に囲まれる陸。

後ろから、夏美が座る席の椅子がひかれる音を聞く清水。

他の女子と一緒になって陸を囲む夏美の姿を、抜け殻のようにぼうっと確認する清水。

困ったようにしながら、けど満更でもない様子の陸。

ちらっと花梨の方を見る陸。

陸の周りで騒ぐ女子生徒とは対照的に無表情で一人もくもくと給食を食べている花梨。

それを見て次第に陸の顔から笑顔が消えていく。 


〇デパート 2F 婦人服コーナー


清 水  「不公平だっ!」

そう大きな清水の声が聞こえて、下のエスカレーターから清水と陸が現れる。

ものすごく不機嫌そうに少し陸の前を早足で歩いていく清水。

  陸  「だから頼むって。 プリクラもプロフィール帳に貼ってくれって頼まれたら断れねーじゃん。 それに一人で撮りに行ってたら大分気持ち悪いだろ俺。 なっ、親友を助けると思ってさ。」

手を合わせて清水に頭を下げる陸。

歩く速度を少し落とし、こちらを振り返りながら、

清 水  「何で俺はもらえねーんだよ、ちくしょう。 陸は前からもらった事、あったのかよ?」

  陸  「いや、俺ももらうのは初めてなんだ」

清 水  「何、冷静に答えてんだ。 プロフィール帳をもらえるって事イコール、少なからずあなたの事が興味ありますよって事じゃねーか」

  陸  「……」

再び早足になって婦人服のコーナーをあっという間に通り抜けていく清水。

天井から聞こえてくる愉快な有線。

お客と店員との会話のやりとり。

色んな音が飛び交っている中、ぼそっと独り言のように、

清 水  「夏美……」


〇プリクラ機の中


  陸  「ここらへんにあるプリクラ機って言ったら、確かここの一台だけだったもんな」

大きな音楽が機械から流れている。

腕をくんで無言の清水。

それを見て、

  陸  「大丈夫、大丈夫。 金は俺が出すからさ。 だから頼む、どうか一緒に撮って下さい」

そう言いながら、アディダスの財布を取り出し銀色の500円を機械の中に入れる陸。

効果音が鳴って、ボタンを操作しだす陸。

清 水  「やり方わかんのかよ?」

  陸  「まぁな」

画面を見ながら次々と撮影モードを選んでいく陸。

興奮したような表情で、

  陸  「うわーっ、やっぱすげー古いよなこのプリクラ」

清 水  「えっ……」

驚いたように陸のその様子を見つめる清水。

次第に冷めたような表情になっていく。


〇デパート 2階


陸の手元には清水と二人で撮ったプリクラが握られている。

先を歩く清水。

下の階に下りるエスカレーターを素通りする。

焦る陸。

  陸  「おいっ、どこ行くんだよ?」

清 水  「ちょっと見に行こうぜ」

おもちゃ売り場を指差して、進んでいく清水。


〇おもちゃ売り場


  陸  「おーっ、ハイパーヨーヨーじゃん」

お試しで置いてあるハイパーヨーヨーを指にはめてプレイする陸。

  陸  「ループ・ザ・ループ!」

その掛け声とともに、器用に半円を描く陸のヨーヨー。

今にも周りの商品に当たりそうになっている。

その他にも「犬の散歩」や「ブランコ」など色んな技を繰り出し、やっと満足したのかさっきまで一緒にいた清水がいない事に今になって気付く。

  陸  「おーい、清水」

大きな声で叫びながらおもちゃ売り場の中を歩いてまわる陸。

一通りまわってカードを見ている清水を発見する。

  陸  「(いたっ!)」

しかし、声をかけれずしばらく固まってしまう陸。

周りを見渡して持っていたカードをすっとポケットにいれる清水。

何事もなかったかのようにこちらに向ってくる。

陸の存在に気付く清水。

近くまでやってきて小声で、

清 水  「余裕だわ、陸だったらもっとうまくやれるんだろうけどな」

ふっと笑ってそのまま陸の前を通り過ぎていく清水。

その場に立ち止まっている陸。

急に清水を追いかけ手を掴む。

驚いている清水。

清 水  「何すんだよ!」

  陸  「馬鹿な事してんじゃねーよ。 すぐに返すんだ」

清 水  「はぁ? いつもお前だってやってるじゃねーか。 何をいまさら」

  陸  「そうだったとしてもだ! 早くしろっ!」

真剣な表情で声を荒げる陸。

周りにいた主婦が不思議そうな目でこちらを見ている。

その視線を気にしながら、

清 水  「馬鹿野郎っ! まじで訳わかんね……」

陸のむなぐらを掴もうとした次の瞬間、清水の肩にぽんっと手が置かれる。

従業員  「そのポケットの中に入れたものを出しなさい」

ゆっくりと声のする方を振り返る清水。

驚いた表情の陸。

強面で体の大きな従業員が冷徹な目をして清水を見ている。

清 水  「何、言ってんだよおっさん。 何もポケットになんか入れてねーって」

首をかしげてとぼけて見せる清水。

従業員  「とにかく事務所まで来てもらう」

そういうと清水の腕を勢いよく掴み、そのまま歩いていく。

振り返り、陸に向って、

従業員  「お前も来るんだ」

何も言わずとぼとぼと従業員の後ろをついていく陸。

清 水  「何しやがんだ! 離せ、離せよっ」

必死に抵抗する清水。