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20日間のシンデレラ 第2話 お前は一体、誰なんだよ

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  陸  「(何かせっかく過去に戻ったってのに何にもしてないよな俺。 得意だったドッジボールもぼろ負けだったし……あぁ思い出すと気が重たくなる……あれはさすがにショックだった。 今の自分の体が思うように動かなすぎて、こんなにも激しい事をしていたんだって素直に驚いたぐらいだ。 まだまだ当時のこの体を使いこなすには少し時間がかかる。 昨日家に帰って悩むようにずっと考え続けて出た推測だ。 けど確証はない。 ただ……花梨にも馬鹿な態度をとっちまうし結局、何にも変わってないじゃねーか……)」

ふーっと溜め息をつく陸。

自分の肘が思ったより机の端に追い寄せられていたノートに軽くあたり、床に落ちる。

教室にノートが落ちた音が聞こえる。

その音にびっくりする花梨。

花 梨  「もーっ、何やってんの」

眠そうにしながら、ノートを拾う花梨。

たまたま開かれていたページを見てしまう。

花梨の表情が次第に変わっていく。

突然、驚いたように、

花 梨  「えっ、陸めっちゃ上手いじゃん!」

授業中にも関わらず大きな声をだす花梨。

生徒の視線が集まる。

清水も後ろを振り返りながら、

清 水  「どうしたんだよ? おーっこの絵、陸が描いたのか?」

  陸  「いや……まぁ、ぼーっとしながら適当に……」

花梨と清水が大きな声を出し、それがきっかけで周りの生徒達もざわざわと騒ぎ出す。

突然ゆっくりと陸の方にやってくるイダセン。

後ろを向いている清水に小さな声で、

  陸  「やべぇ、イダセンこっち来るぞ! 清水、前向いとけ」

陸に忠告されてさっと正面を向く清水。

急いでノートを陸の机に置く花梨。

迫ってくるイダセン。

不自然ににこにこしてごまかしている清水。

全く清水を見向きもせず、素通りしていくイダセン。

  陸  「(来たっ! 完全に怒られるな俺。 授業妨害したんだし……)」

ぴたっと陸の席の前で立ち止まるイダセン。

下を向いて視線を合わせないようにしている陸。

机の上にあるノートを取り上げる。

陸が描いた絵を眺めながら、

イダセン 「……」

何も言わないイダセン。

すたすたと何事もなかったかのように教卓の方に戻って行く。

  陸  「えっ?」

思わずそう声に出てしまい驚いている陸。

周りの生徒もイダセンの予想外の行動に唖然としている。

生徒の方を振り返って、

イダセン 「とりあえず、授業は聞かないと駄目だぞ。 出雲、前にでてこの問題を解きなさい」

  陸  「はい」

いつの間にか問題が書かれていた事に気づかず一瞬、驚きながらも返事をする陸。

ゆっくりと席を立ち上がり黒板に向かう。

白のチョークを持って答えを書いていく。

考え事をしている為、 どこか心ここにあらずのような表情の陸。

答えを書き終わりチョークを戻す。

前 田  「すげぇ……」

一番前に座っていた前田がぼそっと一言。

それをきっかけに我に帰る陸。

周りを見渡すとみんな不思議な顔をしている。

その意味が全くわからない陸。

イダセンまでもが驚いた顔をして、

イダセン 「……どうしたんだ出雲、変なものでも食ったか?」

そう言いながら黒板の前に立つイダセン。

赤のチョークを持ち陸の答えに大きく丸をうつ。

その瞬間、教室で歓声が上がり沢山の拍手が沸き起こる。

「奇跡だ」とか「ありえない」とか色んな声が飛び交う中、自分の答えをまじまじと見ている陸。

  陸  「(えっ……すげぇ簡単じゃん)」

勇者のように周りから讃えられながら自分の席に着席する陸。

すぐに清水がこちらを向いて、

清 水  「おぃおぃ一体どんな魔法使ったんだよ陸。 キングオブバカのお前が段々神様に見えてきたぞ。 ははーん、さてはもてようと思って影で勉強しだしたなお前」

ケラケラ笑って陸をちゃかす陸。

  陸  「ま、まぁな。 お前ら俺の本当の実力を知らなさすぎなんだよ」

清水の勢いにつられて調子に乗る陸。

  陸  「(……何だかすごい事になってきたぞ。 こんな簡単な小学生の問題を解いただけで奇跡がられるなんてどんだけ馬鹿だったんだ俺……けど悪くないな。 もういいっ、折角だし今の状態をとことん楽しんでやるっ)」

清 水  「なぁ、どう思う花梨? 陸が神だぞ」

ははっと笑って、

花 梨  「何よ神って。 陸は陸じゃん」

自分が期待していた答えと少し違い一瞬不貞腐れたような表情になる陸。

花 梨  「けどもう馬鹿って言えなくなるな。 あたし、あの問題わかんなかったし。 ははは……」

  陸  「だろ花梨。 俺もやればできるんだって」

      
〇教室(給食)


イダセン 「手を合わせて」

ぱちっと生徒が手を合わせる音。

一 同  「いただきます!」

その掛け声の後、それぞれがそれぞれの行動をとり始める。

真っ先にあまった牛乳を求めて黒板の前でじゃんけんをしている前田。

一人教卓で給食を食べているイダセン。

まわりに見つからないようにこっそり嫌いなパンを机の中に隠そうとしている米川。

がやがやとおしゃべりをしている生徒。

机はそれぞれ近くにいる四人を一組の班にして、向かい合わせにしてひっつけている。

陸の正面には花梨、右隣には清水が座っている。

陸のお盆の上に敷かれた可愛らしい車のデザインが描かれたナフキン。

それを眺めながら、

  陸  「(車って……だれがこのチョイスをしたんだろ? オカンかな……)」

ミルメークの粉をストローでかき混ぜ、牛乳を飲んでいる陸。

横から清水が、

清 水  「陸ぅーー」

全力の変顔で陸にせまる清水。

噴出しそうになり、ゲホゲホむせている陸。

  陸  「こっ、殺す気か!」

げらげら笑っている清水。

その瞬間、急に天井から「だんご三兄弟」が流れる。

端の方にいた男子生徒が立ち上がり一緒になって「だんごっ、だんごっ♪」といった具合に大熱唱をしている。

清 水  「ったく何でモー娘。流れねーんだよ。 俺の愛するゴマキの声が聞けねーじゃねーか」

まだむせている陸。

隣の班にいた女子生徒がそれを聞いて、

女子生徒 「ほんとキモイよね男子って。一体、モー娘。のどこがいいのよ」

隣の班から「ねーっ」という女子の声が聞こえてくる。

米 川  「ほ、本当だよな。 そんなのが好きな奴の気がしれないよ」

ふっと髪の毛をかきあげて、もう片方の手で安部なつみの缶バッチがついた筆箱を机の中に隠す米川。

清 水  「何だとてめーら、日本の未来も俺の未来もWOW WOW WOW WOW~♪(by モーニング娘。 LOVEマシーンより) なんだよ!」

清水の後ろにいた夏美がこちらを振り返り、

夏 美  「清水、そんな趣味あったんだ。 気持ち悪っ……」

好意のある夏美から直接その言葉を浴びせられ、体にどーんと稲妻が走ったかのように打ちひしがれている清水。

その隣で食事を再開する陸。

ちらちら花梨の顔を見て、また視線を食べようとしているわかめご飯の方に戻す。