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20日間のシンデレラ 第2話 お前は一体、誰なんだよ

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清 水  「あれぐらい取れよ……」

小さくなっていく陸の後姿。

          ×           ×           ×

教 師  「まだやってんのかお前ら。 もう校門閉めるぞ」

玄関から教師が出てきて陸たちに声をかける。

辺りはすっかり暗くなっている。

一 同  「うぃーっす!」

大きく返事をして教師の元に駆け寄る一同。

がらがらと音を立てて門が閉められる。

五組生徒 「次こそ決着つけるからな」

そう捨て台詞を言い放って走り去っていく五組の生徒達。

校門の前で残された陸、清水、前田、米川。

  陸  「じゃあ俺も帰るな、また明日」

陸だけ帰る方角が違う為、一人で帰っていく陸。

清水 前田 米川 「また明日」

陸と反対の方向へ帰っていく三人。

静けさが漂う。

とぼとぼと歩く三人。

遠くなる学校が次第に不気味に感じられていく。

夜の虫たちの鳴き声が一層大きく聞こえる。

沈黙を切り裂いて、
 
米 川  「なぁ、陸ってあんなに下手だったっけ?」

二人に問いかける米川。

しばらくして、

清 水  「陸は少なくとも四組では一番上手い。 たかがフェイントでアウトになるなんてありえねぇよ……」

前 田  「ドッジボール大会でも他のクラス相手に大活躍だったもんなぁ、陸」

またしても沈黙。

近所の家から夕飯の匂いがしてくる。

とぼとぼと歩き街灯の下で立ち止まる三人。

また明日と声を掛け合いそれぞれ帰路に向かう三人。

少し歩いて、二人の方を振り返る清水。

清 水  「多分さーほんとに体調悪かっただけだよ、あいつ」 

遠くから笑いながらうなづく二人。

手を挙げて再び自分が帰る方角に向かう清水。

次第に笑顔が消えていく清水。

壊れた街灯の光が、点いたり消えたりして清水を照らしている。


〇教室 休み時間(翌日)


  陸(語り)「7月4日。 なにもかもが新鮮な小学校生活。 とても自分が一度経験した事とは思えない。 花梨を悲しませたくない、そして昨日あいつの姿を見て改めて確信したけれど正直やっぱり自分の気持ちをきちんと伝えられなかったって事も、俺の後悔の中の一つなんだ。 そんな気持ちと反比例して悩みの種となっている自分という存在。 周りの生徒に自分の正体がばれてはいけないという事もあって、思うように行動できない俺
がいた……」  

米 川  「みんなー注目! すっげーの持ってきたぜ」

教室の真ん中で大声をあげている米川。
   
ざわざわと不思議そうに米川の周りに集まる生徒達。

米 川  「いやー俺んち金持ちだろ? だからおやじの仕事のコネでなかなか手に入らないレアなものがバンバン手に入る訳。 それを特別に俺がもらったんだよ。 やっぱ未来の社長は運に恵まれてるんだなーがっはっはっ」 
      
寝癖でぼさぼさの髪、左右の長さが違う靴下、破れた所を縫って継ぎ接ぎができている制服、真っ黒に汚れている筆箱にぼろぼろのノート。

誰もが本当は米川が金持ちではない事を知っているので、また嘘かといった感じの生徒達。

米 川  「見て驚くなよーじゃーん」

机の上にどさっと彼が言うレアなものを置く米川。

不気味な目をぱちくりさせ、体はふわふわした毛で覆われ、丸い嘴をもぐもぐさせて動いている手のひらサイズの物体。

清水が間から割り込んできて、

清 水  「こ、これファービーじゃん!」

えーっと驚く生徒達。

花 梨  「うそっ、見せて見せて!」

清水の声に反応して席を立ち上がる花梨。

目をキラキラと輝かせている。
      
花 梨  「ファービーだってさ陸! やばいってー絶対可愛いよーいこいこっ」

ぶんぶん体を揺さぶられ目を回している陸。

  陸  「いや……俺はいいよ。 花梨行ってこいよ」

陸を揺さぶる手が止まる。

花 梨  「あ……うん……」

少し寂しそうな顔をして米川の元に駆けていく花梨。

一人ぽつんと自分の席に座っている陸。

  陸  「(何でそんな言い方しかできないんだよ俺。 せっかく誘ってくれたのに……)」

花梨、興奮しながら、

花 梨  「これってさ今、人気ありすぎてなかなか手に入らないんでしょ? すごーい、えっ確か話しかけるとしゃべるんだよね?」

ファービーだと聞いて次々と米川の周りに生徒が集まってくる。

自慢げな顔をしながら、

米 川  「もっちろん、試しに何か話しかけてみろよ池田」

花 梨  「へへっ」

期待に満ちた顔を浮かべファービーに近づく花梨。

花 梨  「こんにちは」

全く反応がないファービー。

米 川  「多分、声が小さいんだよ。 もっと大きな声で」

大きく息を吸い込む花梨。

花 梨  「こんにちはぁ!!」

しばらくして機械が動くような音がする。
      
ファービー 「……你好」

花 梨  「あっ! 何かしゃべった。 君のお名前は?」

またしても機械が動くような音がする。

ファービー 「……餓死我了」

花 梨  「えっ……」
              
教室が静かになる。

顔を見合わせ不思議そうにしている生徒達。

目をぱちくりさせながら、

ファービー 「……今天去喝酒?」

花 梨  「きもっ!」

ぶんっとファービーにパンチを繰り出す花梨。

鈍い音を立て勢いよく教室の隅に飛んでいくファービー。

米 川  「何すんだよー池田!」

花 梨  「全然可愛くないじゃん! 何よこれー」

米 川  「よく見ると可愛いだろ! ほらあの目とか毛とか嘴とか」

花 梨  「大体、何しゃべってんのか全くわかんないし! 呪われるかと思ったじゃん。 米川あんた、ろくなもん持って来ないわね」

米 川  「何だと!」

教室の中央で米川と花梨の口論が始まる。

清水がまた始まったというカンジで自分の席に戻っていく。

それにつられて米川の席を離れていく生徒達。

生徒が離れていく時に一瞬、米川の机に体があたる。

その衝撃で机の上に置いてあるファービーが入っていた箱が、ぽてっと倒れる。

箱の隅に小さく書いている文字。

(名称 ファービー人形 中国語版)

なおも口論を続けている花梨、米川。

その様子をぼうっと見ている陸。

一方、同じように床に視線を落としぼうっと見ている恵子。

ファービーが機械音を響かせながら、床に転がっている。

ゆっくりと持ち上げ机の上に置きまじまじと眺める恵子。

恵 子  「(愛くるしい……)」

          ×           ×           ×


〇教室 授業中


熱心に授業をしているイダセン。

真剣に聞いている生徒達。

どこかうわの空の陸。

ノートにはぼーっとしながら陸が描いた恐竜の絵が完成されている。

ちらっと横を見る陸。

花梨が眠たさを必死でこらえている。

それを見ながら、