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『春の野にいでて若菜つみし頃』

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僕と彼女が初めて出会ったのは春先のことだった。
 暖かい風に誘われてふと山野草を摘みに行きたくなり、西麓に裾野が広がる若草山の麓へ一人で出掛けた。
 せり・わらび・ぜんまい・ふきのとう等、季節感溢れる野草の豊富さは身中に幸福感を満たしてくれる。腰を屈めて無心にそれらを摘み、持参したビニール袋に詰め込んでいった。摘み取った野草で作る料理を思って自然に頬もほころぶ。
 そんな時、突然すぐそばで甘い香りの声がした。いや、実際に声に香りがしていたわけではない。彼女自身の香りと一緒にその声が僕の上に降ってきたのだ。
 とても不思議なことなのだが、僕は顔を上げて彼女の顔を確認しなくても、見ず知らずの彼女が何百年も前から約束された運命の女(ひと)なのだと分かっていた。

「こんにちは」
 彼女はそう言ったが、その瞳は「お久しぶり」と笑っていた。
 そう。彼女も僕と同じ感覚があったのだ。だからこそ声をかけてきた。
 僕達にはそれ以上に言葉は必要ない。互いの現在の名前や環境も関係ない。僕達には数百年もの間脈々と繋がってきた強い絆があったからだ。
 僕達はその絆を確かめるように強く抱き合い、激しい口づけを交わした。