小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

舞うが如く 最終章 3~4

INDEX|5ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 



 渡良瀬川の下流にある市街地の大間々までは、およそで2里余りです。
銅山のある足尾まで続く街道沿いにあるこの水沼では、娘たちが楽しむための
余興場や商店などは、ただの一軒もありません。
もともとが街道沿いに、少数の人々で細々と農業を営んできた寒村の集落です。
そのために、多くが日暮れと共に宿舎の部屋へこもったまま、
思い思いに時間を過ごすしかありません。


 楽しみと言えば、休日に大間々の市街地へ出て、芝居小屋や余興場へ
繰りだして、商店街などで買い物をすることくらいでした。



 荷車や牛馬などでも繰りだしますが、多くは数人づつの連れとなり
渓谷沿いの山道を、2時間近くをかけて歩きます。
地元の人たちが、足尾からの荷馬車で賑わう銅(あかがね)街道のもうひとつの名物として、
「工女たちの運動会」と呼んだ光景でした。



 足尾銅山は、1550年(天文19年)に発見をされました。
本格的にその採掘が開始されたのは、江戸時代からのことでした。
当時の足尾銅山は大いに栄え、足尾の町は「足尾千軒」とまでいわれるようになりました。
当時の代表的な通貨のひとつ、寛永通宝もここで鋳造されています。


 江戸時代には、年間1,200トンを産出しましたが、
その後、一時採掘量が極度に減少し、幕末から明治時代初期にかけては、
ほぼ閉山状態となってしまいました。
明治4年(1871年)に民営化されましたが、銅の産出量は、
年間150トンにまで落ち込んでいました。