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舞うが如く 最終章 3~4

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舞うが如く 最終章
(4)工女たちの「運動会」とは
 


 水沼製糸場における最盛期では600人を越える工女たちが働いていました。
彼女たちの指先から紡がれた良質の生糸は、
当時のアメリカにおいて、女性たちの足を飾り立てる絹の靴下として、
大いに人気を博しています。


 長屋門の寄宿舎は、さらに拡大されました。
同時に中庭にも、2階建ての新しい宿舎も建てられ、工場はさらに拡大の一途をたどります。
こうして、人家もまばらだった渡良瀬川渓谷沿いの寒村にはまたたくまに、
年若い女性たちの大所帯が、誕生をしてしまいました。
多くは近郷から働きに来たの少女たちでしたが、遠く新潟や長野から働きに来た娘や、
おなじく遠隔地からの幼い少女たちなどもたくさん含まれていました。



 女性たちが身分制度の厳しい、封建時代から解き放たれたとはいえ、
社会的には、まだまだ未権利のままにおかれた時代です。
安心して働ける「職場」といえるものが皆無だったこの時代に、
器械化を伴った製糸場の登場は、工女という仕事を女性たちにもたらして、
一躍、人気職業として脚光をあびました。


 「工女」という言葉は流行語となり、研さんを積んで一級工女になることが、
この当時の田舎の出世物語になりました。
しかしそ一方で、この大集団による共同生活ぶりが、健康面では大いなる
災いを招くことになってしまいました。
狭い宿舎や、締め切ったうえに蒸気の充満した工場での過密な労働が、
健康な彼女たちの肉体を、序々に蝕ばみはじめます