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地図

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おばさんたら、無表情で地図の上を指差して呟いたの。
『ここまでは遠いですね。近くだったらいいのにね』って。
そりゃそうだけど、そういかないのはわかるでしょって思いながら。
その指の先を見ると、私の大好きなあの人の居る辺りじゃない。
な、な、なんと、こんな偶然が・・・。
思わず『一緒に行きますか?』って言いたくなっちゃった。
それからおばさん、やっぱり無表情でその地図を折り始めたの。
こことその場所が見えるように。
そんなことをしたら行き方を教えてあげられないよ。え・・・!?
おばさんは、折り曲げた所を千切り始めたのよ。あらら、どうして。
あれ?身体が・・・。頭がぐらーんとする。周りが歪んで・・・見える・・・。

――たぶん、私はここで意識がなくなったんだと思う。
  目を閉じ無重力は経験したことがないけれど、とっても軽く、
  どこまでも小さな光を追いかけるように、
  足を地面に付けずに彷徨っている感じがしたから――

ああ、どうしたのかしら、私。やっと頭に意識が戻ったみたい。
目の前には、公園があるし、もうクラクラしてない。1+1=2。3×0=3。
うん、大丈夫!ってそこは突っ込んで!【違うでしょ!!】って。
はい答えは?・・・ってやってる場合じゃないけど、私は、まだベンチに座っている。
でも もうおばさんの姿はなかった。

作品名:地図 作家名:甜茶