神様ソウル
謎の女による襲撃という衝撃的な事件により平凡な日常が破壊されたその夜、僕はなかなか寝付くことができず、翌日の朝寝坊をしてしまった。
家出てから学校の四階の教室まで休みなく走る。一時間目の開始前の休み時間には間に合いそうだ。
教室の中は次の授業の準備をしたりおしゃべりする生徒達でがやがやと賑わっていた。その間を縫って教室の中を進み、僕は自分の席に着いた。
「里見くんおっはよ」
「おおーおはよー」
僕の席に駆け寄っていち早く挨拶をしてきた彼女の名前は麻倉まゆみ。クラス委員を務める優等生で、積極的に僕に話しかけてくれる数少ないクラスメイトの一人だ。
「今日遅かったね。また遅くまで遊んでたんでしょ?」
「昨日自分の生い立ちに関する衝撃的な真実を知らされてショックで眠れなかったんだよ」
「え、親と血が繋がってなかったとか?もしかして里見くん橋の下に捨てられてたの……?」
「それに加えて見知らぬ人に命を狙われて命からがら家に逃げ帰ったんだ」
麻倉は呆れた様子でため息をついた。
「はぁー。色々あったんだね。まぁ詳しくは聞かないでおくよ。ただ遅刻には気をつけるようにね。これ以上は進級に関わるってこの前先生が言ってたから」
「おう、ありがと」
僕は教科書を机の中に突っ込みながらぶっきらぼうに答えた。
「あ、そういえば、今日うちのクラスに転校生が来たんだよ。ほらあそこ」
麻倉が指した方向を見ると教室のその一角に人だかりができている。
「へぇー」
「もの凄く可愛い子でもう大人気だよ。お父さんの転勤って言ってたけど珍しいよねこんな時期に。里見くん隣の席だから色々教えてあげてね」
「うい」
「それじゃね」
麻倉は自分の席に戻っていった。一時間目が始まるまで五分弱。特にすることの無かった僕は机に体を預けて目をつぶった。