神様ソウル
書店の中はざわついていた。ビニールで包装された本の束が床に積み上げられ、店員達が中をせわしなく駆け回っている。
「なんか騒がしいですね……」
店員達の会話を聞くに、どうやら軽い改装を行ってる最中らしい。
「改装中……こんな時に」
『ヒロト』
「うおっ」
突然テミスの声が頭の中に響いた。耳で聞き取るのとは違う、スピーカーを頭の中に埋め込んで音を発しているような感覚。
「ん?どうしたの?」
麻倉が僕の声に気付いて振り向く。
「いやなんでもない。行こう急いで行こう」
前方を手で指して前進を促す。
『めんご。驚かせちゃったね。あなたは心の中で言葉を紡げばいいから話さなくても大丈夫よ』
「こんなことできたのか」
『まぁ一応神様みたいなもんだから。あんまやりたくないんだけど。それより時間といいこの状況といい、もう麻倉まゆみの命に関わる問題がいつ起こってもおかしくないわ』
「……ああ」
『本棚はもちろん天井や床、店員にも注意を払うこと。命に関わるともなれば何か大きい動きがあるはずだから神経を研ぎ澄ませていれば見逃すことはないはず。しっかりね』
「了解」