神様ソウル
都会と呼ぶには程遠いこの街も、駅前に行けばそこそこの賑わいを見せる。
レストランやラーメン屋、カラオケボックスにゲームセンターにボーリング場。他にも様々な店が建ち並んでいる。大きな街と比べると見劣りはするが、放課後の学生達が暇を潰すにはもってこいの場所だ。
腕時計で時間を確認する。十五時四十九分。
「じゃあまずは本屋に向かいましょうか。茅ヶ崎さん、なんの科目の教科書が必要なの?」
「あ、えーと。全部です、全部。予約してあるのでまとめて用意してあるはずです」
「そうなんだ。じゃ店員さんに聞けばオッケーだね」
「はい……本当にすみません」
「じゃ案内するね。ちょっと道順が複雑だけどなるべく覚えた方がいいかも。この街おっきい本屋あそこしかないし」
麻倉は先頭をきって歩き出した。
「教科書、予約してあったのか」
「まぁしてないけどなんとかなるでしょ」
「……なんとかならないだろ」
「だいじょうぶ。ある程度の運命改変なら簡単にできるから。本を予約したり美少女女子高生として学校に潜入するくらいなら訳ないことですよ」
死ぬ予定の人の命を救うのとは違ってね、とテミスは小声で付け足した。
大通りから路地に入り人気のない道を進んでいく。時計は五十七分を指していた。
「そろそろですね。もう何が起こってもおかしくありません。気をつけてください」
「わかった」
手の届く範囲に麻倉が居るようにしないと。僕は早足で歩き、麻倉の横に並んでぴったりとくっついた。
「ん?どうしたの?」
「え、何が?」
「いきなりくっついてきたから……」
「そんな近かった?ごめんごめん」
半歩距離を置く。なるべく自然を装わないと。
「私は気にしないよ。茅ヶ崎さんは大丈夫なの?」
「茅ヶ崎?」
「ほらあの子……里見くんのこと好きみたいだから」
「そんなバカな」
「昼休みに屋上に誘ったり、放課後一緒に本を買いに誘ったり、気になる人じゃなきゃこんなことしないと思うけど。あ、でも……」
「でも?」
「ん、なんでもない……」
麻倉のの横顔に視線を向けると、彼女の耳は赤く染まっていた。
「ていうかさ、里見くんはどう思ってるの?茅ヶ崎さんのこと。あんな可愛い子に誘われて悪い気分はしないんじゃないの?」
「そんなことないよ。いちいちうるさいし話はかみ合わないし面倒ごとばかり持ち込んでくるし。ここ最近の災難の九十パーセント以上はあいつが原因d」
「……聞こえてますよ」
「すいません」