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スターダスト・ガール

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 「おい悠一!」
 昼休み、特に何もすることがなくぼーっと窓の外を見ていると、クラスメイトの重康が僕の机に突っ込んできた。
 「最近学校裏の山の方で化け物を見たとか変なうめき声を聞いたって奴がいてさ!見に行こうぜ!美香も誘ったからさ!放課後勝手に帰ったりすんなよ!」
 まだ何も答えてないんだけど……。
 そして授業が終わり放課後。
 「いやー来たね、放課後!わくわくだね!」
 「わくわくしてるのはあんただけみたいだけど……」
 腕を組んで不機嫌そうな顔をしている彼女の名前は三枝美香。僕の幼馴染だ。
 「何?話した時は美香も張り切ってたじゃん」
 「張り切ってなんかいないわよ。私は悠一が行くって聞いたから行こうかなって思っただけ」
 「結局お前は悠一目当てか!この女狐が!」
 「……うるっさいわね!私は悠一のお母さんに学校に居る間はよろしくねって頼まれてるから、悠一を見守る義務があるの!悠一も乗り気じゃないんなら私は帰るわよ」
 「ふん、帰れ帰れ!女なんぞには初めから期待しとらんわ!……悠一、悠一は裏山のモンスターの噂にわくわくするよな?なんかこう童心をくすぐられるような、今にも飛び出したくなるようなそんな気分に、なるよな?」
 「……どちらかといえば、ならない」
 「決定ね。解散」
 教室の出口に向かって歩き出す美香。僕もそれについていくことにする。
 「頼むよ!一人で山にモンスター探しに行ったって何も楽しくないのは明白だろ!恐怖とか不安を共有する仲間がいてこそだろ!もう情けでいいよ!情けでいいから、俺と一緒に裏山に行ってくれよ!」
 「なんて見苦しい男なの……」
 「美香はこの後用事とかあるの?」
 「んー、特に無いなぁ。帰っても勉強するくらい」
 「……時間もそんなに掛からなそうだし、付き合ってやらないか」
 何が重康をここまで突き動かすのかは全く分からないが、ここで見捨ててしまうのは少しかわいそうだ。
 「そうねー、悠一がそう言うんなら……」
 「そうか。ありがとな」
 「んーん。お礼なんていいよ。行こ」
 「ちょっとお二人さん!俺を置いていかないでよ!」
 この街は都会からは大分離れた田舎で、林や舗装されていない道がいまだに多く残っている。僕らの学園の周りも多くの自然が残っていて、学園の裏には小さな山があるのだ。それが裏山だ。背の低い木が何本も立ち並ぶこの山は、近所の子供達の遊び場になっている。
 「さて、ここが様々な怪奇現象が起こり騒がれている問題の場所なわけだが!」
 「特に変わったところは無いわね」
 「だな」
 「昨日雨が降った影響かしら、地面がぬかるんでる。靴がどろどろに汚れちゃったわ」
 「だな」
 「帰りましょうか」
 「だな」
 「待って!早い!早すぎるよ!もう少し辛抱してよ!そんな簡単に出てくるわけ無いんだから!ついて来たからには最期まで付き合ってよ!」
 「冗談よ。いちいち騒がしいやつね」
 「重康、学校で様々な噂が流れてるって聞いたけど具体的にはどんな話なんだ?」
 「おお、よくぞ聞いてくれた。それに関しては俺の決死の聞き込み調査によって、幾つもの決定的な証言を得ている!」
 重康は懐からメモ帳を取り出した。
 「えーまずは二年三組のY君から。『頂上付近のベンチに座ってジュースを飲んでいたら、ふもとの方で何か大きなものが木々の間を通るのを見た。あとでその現場に行ってみたら木が何本も倒れていた』」
 メモ帳をめくり、引き続き話す重康。
 「次に二年三組N君の証言。『友達と鬼ごっこに勤しんでいたら、中腹の広場でなにか大きなものを引きずったようなあとが地面についていた』」
 「……」
 「次。二年三組……」
 「全部うちのクラスじゃねーか!なにが決死の聞き込み調査だよ」
 「しかもイニシャルから察するにどっちも重康のくだらない不良仲間だわ!しかも全く決定的な証言じゃないし!」
 「待て!他にもあるんだ、さっきのよりも三倍くらいわくわくするやつが」
 「もういいよ、帰ろう」
 「ええ、帰りましょう」
 結局二十分ほど適当に怪しそうな場所を歩き回り、帰宅した。もちろん何も見付からなかった。


作品名:スターダスト・ガール 作家名:くろかわ