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スターダスト・ガール

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 「どうしたの、その女の子?」
 僕の後ろについて階段を降りてきた女の子を見て、母は目を丸くした。
 「えっと……友達だよ」
 「友達ってあんた、こんな時間に……」
 「佐藤さくらと申します、お母様」
 「あ、ご丁寧にどうも」
 うやうやしく頭を下げる女。母は戸惑った様子で挨拶を返した。
 「朝食もう一人分用意できる?」
 「え、ええ」
 母は慌てた様子で台所に向かっていった。
 「……名前、さくらって言うのか」
 「今考えた」
 「偽名かよ!」
 「名前は昨年生まれた女児の中でもっとも多く付けられたものを採用。名字も平凡で一般的と認知されているものに」
 「……要するに適当か」
 「別にいいだろう。名前なんて対して重要なものでもないし」
 「この国には名は体を表すという言葉があってだな……」
 しばらくして母が朝食を持ってきた。
 「いただきます」
 がつがつと白米を豪快に口の中へ掻き込んでいく痴女。母はそれを唖然とした表情で見つめている。
 「奥様、おかわりをお願いします」
 「あ、はいはい」
 大盛りにご飯をよそい、さくらに渡す。
 「ありがとうございます」
 僕はもうとっくに食べ終わり、母と同じようにさくらの様子を見つめていた。
 「ちょっと、悠一」
 「ん?」
 手首をつかまれて、台所のほうに連れて行かれる。
 「あの子一体誰なのよ?」
 「だから友達だって」
 「どうして友達がこんな朝早くにあんたの部屋から出てくるのよ。しかも女の子って」
 「えーとそれは……」
 母はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
 「私はてっきり悠一は美香ちゃん狙いだと思ってたんだけど。やっぱり幼馴染って恋愛対象にはならないものなのかしら……」
 「いや、だからね」
 「ま、なんにせよ悠一も一つ大人になったってことね。女の子を部屋に連れ込んで家で一緒にご飯を食べて学校に同伴出勤なんて。きっと天国のお父さんも喜んでるわよ……」
 「ち、違うよ。そんなんじゃない」
 「まーまー。そんなに恥ずかしがることじゃないわよ。ちょっと高校生がやるには早いかもしれないけどね。まったく悠一にはもったいないくらいのべっぴんちゃんね。一体どうやって口説いたのよー憎いねーこのこの」
 「聞いてくれ」
 「こうやって泊めたりするのは私は反対しないけど、相手の親御さんには嫌われないようにするのよ。それじゃ、私は仕事だから、先に出るわね。今日くらいは授業サボっても別に気にしないから、好きに楽しみなさい。ふふっ。じゃねー」
 全く話を聞いてもらえなかった。
 「さくらちゃん、私は仕事に行くからあとは悠一と二人で楽しんでね」
 「あ、はい。本当にありがとうございます」
 「いーのいーの。悠一をよろしくねん」
 母は意気揚々と家を飛び出していった。
作品名:スターダスト・ガール 作家名:くろかわ