スターダスト・ガール
妙な息苦しさと暑苦しさを感じて僕は目を覚ました。
「重い……」
カーテンの隙間から差し込む朝日が部屋の中を薄く照らしている。僕の上に誰かが跨っていた。
「なんだお前!」
僕が声をあげると、人影は両手を伸ばし僕のそれぞれの腕の自由を奪った。ものすごい腕力だ。
「誰か……!んぅ」
助けを呼ぼうとすると、人影が顔を近づけ僕の口を塞いだ。長い髪が僕の視界を遮り、甘い匂いが鼻腔をくすぐった。僕はこいつが女であることに気がついた。
唇の隙間から女の舌が入り込んでくる。僕の口の中を撫で回す。妙な心地よさに体から力が抜けていってしまう。
彼女は唇を離し、僕の耳元で囁いた。
「ねぇ、抱いて」
…………。
「どけ!」
一瞬頭を満たしかけた煩悩を振り払って全身に力を入れると、女の体は簡単にベッドから転がり落ちていった。
「いったー!なにするんだこの野郎!」
「それはこっちのセリフだばか野郎!いきなりキスしてきて『抱いて』ってなんだ!痴女か!痴女なのかお前!」
僕の態度に女は驚いたようだったが、すぐに艶やかな笑みを浮かべた。
「そう照れるな。知っているぞ、この国の人間はたいそうな恥ずかしがりなんだろう?喜ばしい申し出でも一度は断るのが礼儀だと聞いた。だがそんなものは今必要ない」
そういうと女はベッドに登り両手を前について豊満な胸を強調するようなポーズをとり、僕の方へするすると近づいてきた。
「どうだ、この体。お前のような思春期の男にはさぞ魅力的に見えることだろう。こういう女と交わることは男として最高の悦びじゃないか?さ、本能のままに動くんだ。さぁ」
「やはり痴女か!おかあさーん!」
「待て待て待て!大声を出すな!」
「触るな!痴女が移る!」
「さっきから痴女痴女って、ちょっと傷つくぞ!」
「言われたくなかったらもう少し淑やかに振舞え!」
「うるさい!好きでやってるわけじゃない!事情があるんだ!」
「部屋に忍び込んで寝ている男に跨ってキスして誘惑する事情ってなんだ!嘘をつくならもう少し上手い嘘をつけ!痴女が!」
騒ぎ出す僕を黙らせようと女が僕に飛び掛って手で口を塞ごうとしてくる。それを防ごうともみ合っているうちに、バランスを崩して僕らはベッドから転がり落ちてしまった。僕は勢い余って思い切り壁に後頭部をぶつけた。
「いった……」
女はベッドのすぐ下に転がっていた。しかしうつ伏せのままでぴくりとも動かない。
「おい、痴女?」
近づいてゆさぶってみるが動かない。乱暴にひっくり返すと彼女は苦しそうな顔をしていた。
「おい!どうした」
「……は」
「は?」
「……腹がへった」
「……」
「何か食べ物をくれ」
さてと、そろそろ準備しないと遅刻するな。
「待て、行くな!」
「どうして寝込みを襲ってきた女に飯を食わせてやらなきゃいけないんだよ!」
「もうかれこれ四日間、水以外のものを口にしていない……」
「……痴女じゃなくて家出少女だったのか」
「もうなんでもいい……」
「悠一ー!朝食できてるわよ!もう降りてきなさーい!」
階段の下から母が呼んでいる。
「……しょうがないな。食べ終わったら帰ってくれよ」
どうして襲ってきたのかは理解できないままだったが、どうやら悪い奴ではないらしい。腹を満たせば帰ってくれるだろう。
「ありがたい」
女は素早く立ち上がった。
「元気じゃねぇかよ……」
「食卓までの辛抱だからな。元気にもなるさ」
「その前にその乱れた衣服を直していけ」
「了解了解」
……というかそれうちの学園の制服じゃないか。リボンの色から察するに一年生だ。こんな奴が後輩だなんてうちの学園も長くはないな。
「重い……」
カーテンの隙間から差し込む朝日が部屋の中を薄く照らしている。僕の上に誰かが跨っていた。
「なんだお前!」
僕が声をあげると、人影は両手を伸ばし僕のそれぞれの腕の自由を奪った。ものすごい腕力だ。
「誰か……!んぅ」
助けを呼ぼうとすると、人影が顔を近づけ僕の口を塞いだ。長い髪が僕の視界を遮り、甘い匂いが鼻腔をくすぐった。僕はこいつが女であることに気がついた。
唇の隙間から女の舌が入り込んでくる。僕の口の中を撫で回す。妙な心地よさに体から力が抜けていってしまう。
彼女は唇を離し、僕の耳元で囁いた。
「ねぇ、抱いて」
…………。
「どけ!」
一瞬頭を満たしかけた煩悩を振り払って全身に力を入れると、女の体は簡単にベッドから転がり落ちていった。
「いったー!なにするんだこの野郎!」
「それはこっちのセリフだばか野郎!いきなりキスしてきて『抱いて』ってなんだ!痴女か!痴女なのかお前!」
僕の態度に女は驚いたようだったが、すぐに艶やかな笑みを浮かべた。
「そう照れるな。知っているぞ、この国の人間はたいそうな恥ずかしがりなんだろう?喜ばしい申し出でも一度は断るのが礼儀だと聞いた。だがそんなものは今必要ない」
そういうと女はベッドに登り両手を前について豊満な胸を強調するようなポーズをとり、僕の方へするすると近づいてきた。
「どうだ、この体。お前のような思春期の男にはさぞ魅力的に見えることだろう。こういう女と交わることは男として最高の悦びじゃないか?さ、本能のままに動くんだ。さぁ」
「やはり痴女か!おかあさーん!」
「待て待て待て!大声を出すな!」
「触るな!痴女が移る!」
「さっきから痴女痴女って、ちょっと傷つくぞ!」
「言われたくなかったらもう少し淑やかに振舞え!」
「うるさい!好きでやってるわけじゃない!事情があるんだ!」
「部屋に忍び込んで寝ている男に跨ってキスして誘惑する事情ってなんだ!嘘をつくならもう少し上手い嘘をつけ!痴女が!」
騒ぎ出す僕を黙らせようと女が僕に飛び掛って手で口を塞ごうとしてくる。それを防ごうともみ合っているうちに、バランスを崩して僕らはベッドから転がり落ちてしまった。僕は勢い余って思い切り壁に後頭部をぶつけた。
「いった……」
女はベッドのすぐ下に転がっていた。しかしうつ伏せのままでぴくりとも動かない。
「おい、痴女?」
近づいてゆさぶってみるが動かない。乱暴にひっくり返すと彼女は苦しそうな顔をしていた。
「おい!どうした」
「……は」
「は?」
「……腹がへった」
「……」
「何か食べ物をくれ」
さてと、そろそろ準備しないと遅刻するな。
「待て、行くな!」
「どうして寝込みを襲ってきた女に飯を食わせてやらなきゃいけないんだよ!」
「もうかれこれ四日間、水以外のものを口にしていない……」
「……痴女じゃなくて家出少女だったのか」
「もうなんでもいい……」
「悠一ー!朝食できてるわよ!もう降りてきなさーい!」
階段の下から母が呼んでいる。
「……しょうがないな。食べ終わったら帰ってくれよ」
どうして襲ってきたのかは理解できないままだったが、どうやら悪い奴ではないらしい。腹を満たせば帰ってくれるだろう。
「ありがたい」
女は素早く立ち上がった。
「元気じゃねぇかよ……」
「食卓までの辛抱だからな。元気にもなるさ」
「その前にその乱れた衣服を直していけ」
「了解了解」
……というかそれうちの学園の制服じゃないか。リボンの色から察するに一年生だ。こんな奴が後輩だなんてうちの学園も長くはないな。
作品名:スターダスト・ガール 作家名:くろかわ