幼なじみ
僕は空いた皿を片付けるために一旦部屋を出た。
食器を洗って部屋に向かうと、彼女の部屋の向かいのドアの中から水の流れる音がして、真琴が出てきた。
「俺もトイレ」
「ちょっと」
「なに?」
「年頃の女の子の入った直後のトイレに入るなんてマナー違反よ」
「それよく聞くんだけど、一体どうしてマナー違反になるのかな」
「そりゃあ、先に入った人が不快に思うからじゃないの」
「何を?」
「なんとなく、自分の残り香を嗅がれているような気がする……とか?」
「ほぉ」
「おい、入るなって言ってるだろ!」
「真琴の残り香なら俺は構わない。そんなことより早くこの排泄欲を満たしたい」
「言ってることただの変態だぞ!」
「そんな余計なことを考えていられるほど今の俺に余裕はない」
「どうしてそんなになるまで我慢してたのよ……」
「それじゃ」
「ちょっと待て!」
真琴はドアを開けて中に飛び込み、棚に置いてあったスプレー缶を掴み取って中身をトイレ中に振り撒いた。
「はぁ……なんであんたがトイレ入るってだけで私がこんなにがんばらなきゃいけないのよ」
「真琴が一人で慌ててたんじゃないか」
「あんたがトイレに入るタイミングが悪いのよ!」
「文句なら俺の膀胱と尿道に言え!トイレに入らせろ!」
「あんた結構すごいこと言っちゃってるけど自覚ある?……欲望に駆られた人間の成れの果てを見た気がするわ……」