幼なじみ
真琴の母はこれから買い物で家を空けるそうだ。僕は一応インターホンを押して、しばらく待ってから玄関の扉を開けた。
「おじゃましまーす」
返事は返ってこなかった。
階段を上って一番奥が真琴の部屋だ。
「まことー?俺だけど」
彼女の部屋をノックする。返事がない。僕はゆっくりとドアを開けた。布団がもぞもぞとうごめいて中から真琴が顔を出した。
「んぅ…?」
「久しぶり」
「お前かよ……」
「話し相手がいなくて寂しさを感じてると思ってやって来ました」
「呼んでない」
「はいはい」
ベッドの横に置いてあった可愛らしい模様の座布団の上に腰を下ろす。
「どうしたの?いきなり」
「何もやることなくて部屋で寝てたら、真琴のお母さんから電話があって」
「余計なことを。来るんなら連絡くらい寄こしてよ」
「電話したんだけど。ケータイの電源入ってないみたいだったよ」
「ああそうだった。でも、あぁもぉ、突然こられると色々と困るんだから。そこはどうにかしてよ」
「無茶を言うなよ……」
真琴は何度も手櫛で髪を整えながら、落ち着かない様子で文句を言った。
「真琴、それ」
「む?」
僕は彼女の胸元を指差した。パジャマのボタンが三つ目まではずされている。その間からはうっすら赤くそまった胸の谷間がしっかりと見えてしまっていた。
「な!!」
真琴は掛け布団を物凄い勢いで引っ張りあげた。
「これは、なんとなく!息苦しかったから……!」
「あーあるある」
「あっちを向け!」
「ごめんなさい」
「まったくあんたにはデリカシーというものが欠けてるわ」
「……」
「な、なんか言いなさいよ」
「あ、えっと、意外と大きかったです」
「感想は聞いてない!」
布団に包まっていた真琴が顔を出した。パジャマのボタンはしっかりと閉められていた。
「ふぅ、完全に油断していたわ」
「完全にノーブラだったね」
「もうやめてください!」
「これでまた一歩真琴と親密になれた気がするよ」
「なってねぇよ!こっちはそれなりに傷ついてるんだからこういう時はポーズだけでもいいから申し訳なさそうな感じを出せ!」
「久しぶりに会ったってのに随分機嫌が悪いなぁ」
「お前のせいだよ!」