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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十一回・弐】うらうらら

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「…わかったよ…」
矜羯羅がふぅと溜息をついて暖簾を下ろすと泣き声とどろく茶の間へと向かう
「まさに大家族…だなぁ;」
京助も赤くなった額をさすって台所から出た
「まぁ!! 京様!! どうなさったのですか! その額!!」
台所から出たところで上がった高い声
「おりょ~んヒマ子の姉さんじゃないけ」
阿修羅がヒラヒラと手を振った先にはヒマ子の姿
「大変ですわ!! 跡が残ってしまいますわ!!」
そう言いながらゴリゴリと鉢を引きずりヒマ子が京助ににじり寄ると
「唾をつければ治りますわ!! さぁ!!」
バチコイ!! カモン!! とヒマ子が唇を尖らせた
「イヤ; 遠慮します…ッ!!;」
そのヒマ子の横を京助が全力で駆け抜ける
「京様ッ!!」
そしてその京助の後をヒマ子が鉢を引きずりながら追いかける
「愛されてるねぇ竜のボン」
阿修羅がハッハと笑う
「…うだね」
制多迦もヘラリ笑った

「京様ー!! 京様ってば!!」
ドンドンと襖を叩くヒマ子に内側から襖を抑える京助
「もぅ…照れやさんなんですから…」
ズルズルという音共に遠ざかるヒマ子の声を京助が安堵の溜息をつきその場に腰を下ろした
「…っとに…」
ソコは元開かずの間
だいぶ春らしく日も長くなってきたとはいえソコは北海道
夕方になればまだ肌寒かった
「……」
京助が無言のまま窓を見る
まだ葉もついていない木が数本見えた
茶の間から聞こえてきていたチビッコ竜達の泣き声がやんだところをみると矜羯羅や制多迦達があやしているのだろうと思う
ほのかに香ってくる夕飯のにおいをかぐと緊那羅や乾闥婆が着々と晩飯の支度を進めているのだと思える

今は当たり前のように揃っている面々も昔は当たり前じゃなかった
出会ったからそれはここに集まった
その出会いは【時】というものがもたらしたもので
だからこの出会いは【時】によって終わりを迎えるんだろう
「…時…か…」
ことあるごとに迦楼羅達が口にする【時】という言葉を真似てなのか京助が口にした


今じゃ当たり前になっている返事
【ただいま】といえば【おかえり】が返ってくる
ランドセルを背負ってあけた玄関の扉の向こうから欲しかったもの
なんとも言い表せないモヤモヤうのうのした気分になった京助が溜息をつく
母ハルミと悠助と自分しかいなかったこの家