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舞うが如く 第七章 10~13

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 琴たちの一行が製糸場へ戻ったところへ
先ほどのご婦人たちの使いの者が、工女部屋へと訪ねてきました。
女性教師達が琴たちを、異人館にある自室へ招待をしたいと
申しこんできたのです。
同行していた役人たちの了解をとりつけてから、
琴や娘たちが生まれて初めて異人館へ、その足を踏み入れました。



 この日の散歩には参加せず、部屋に残って裁縫などをしていた、
他の女性教師たちも、この日本女性の訪問をことのほか
歓迎をしてくれました。
ビスケットが出され、グラスには赤ワインが注がれます。


 この赤ワインこそが、創業当時に
「偉人には、真っ赤な生き血を呑まれる」といわしめた悪評の元凶です。
大量に持ち込まれてきた赤ワインを呑む彼らフランス人の姿のことを、
当時は生き血を飲む西洋人として、紹介をしていたのです。


 日本娘は、生れてはじめて呑む赤ワインと、
西洋菓子のビスケットのおいしさに、きわめて有頂天になりました。
まさに、日仏合同の製糸場ならではの異文化交流です。

 しかしこの後、一ヶ月もたたないうちに
代表のブリューナ夫妻はじめとして、フランス人技術者や女性教師達は、
その役目を終えて、全員が帰国をしてしまいます。
事実上、これが最初でまた最後としての交流会になってしまいました。