舞うが如く 第七章 10~13
この賑やかな花見の後で、4月に入ってからのことです。
琴が、全快した民子と咲たちを連れて
、再び貫前神社へ病全快の報告もかねて、
その参詣へと出かけました。
琴たちの一行が参詣を済ませて境内を出たところで、
異人たちと出会います。
フランス人女性教師たちのグループとの鉢合わせでした。
こちらも、息抜きをかねて市内を散歩をしていたのですが、
そのうちの一人が、古い歴史と格式といきさつを持つ、
この貫前神社に興味を示しました。
しかし、警護のために同行してきた、製糸場の役人たちとの間で、
なにやら押し問答がはじまってしまいます。
神社境内から出てくる琴たちを見て、
フランス人女性教師達も入ろうとしたのですが、
役人たちは、
「外国人は、神聖な領域である、当神社に立ち入れません」と
毅然として制止をしてしまいました。
肉食のフランス人達を「けがれている」として扱っています。
体調をくずしている一人の年配の婦人が、
「身体が弱いので、ぜひともお参りしたい」と懇願をしていました。、
片言の日本語でいくら訴えても、役人たちはまったく
聞く耳すらをもちません。
やむなく、あきらめた一行が製糸場へ戻ることになります。
人力車へ乗りこもうとして、
このご婦人が、不自由な片足を持ち上げようとして努力をしています。
見かねた琴が、ためらいもみせずに一歩前に進み出ます。
かたわらから婦人の身体を支えると、急ぐこともなく
座席へと介護をしました。
人力車へ無事に乗り込み終えたご婦人が、琴へ感謝を述べています。
しかし残念ながらフランス語であるために、
琴には一切通じません。
作品名:舞うが如く 第七章 10~13 作家名:落合順平