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ウエツグ上次
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観光目的




A・B…青年 C…ヒトガタヒネクレオトコ

二人のサラリーマンらしき男たちが観光にやってきた。やってきた場所はただの田舎なのだが、この二人の世界の価値観は普通の世界の価値観とは何かが違うらしい。そして、二人にはここへやってきたある目的があるようだ。


 明転
 Aは正面を向き何かを見ている。

A「おお!本物だ!!(指をさしながら)派手なサンダル、踝靴下、白ジャージ、Tシャツ、金髪! わぁ。本物のヤンキーのメスだ!!(本を見ながら)凄い!田舎の歩き方の通り!! 都会じゃ滅多に見られないもんなぁ。(目の前の人物達に向かって)皆さんほとんどおそろいなんですね。・・・。ああ。『うぜぇ。』って言われてしまった・・・。(何かを思い出したように)ああ!(本のページを捲る)ああ。これだ、これだ。そうか!泣き声か!!『うぜぇ、しね、だりぃ。』あぁ。はじめて聞いちゃった!! やっぱ買ってよかったなぁ。(あたりを見回し始める)あれ、マルちゃん、どこ行っちゃったのかな。」
B 下手からやってくる。
 「ああ!いた、いた。シカクちゃん!」
A「ああ!マルちゃん!どこ行っちゃったかと思ったよぉ。」
B「ごめん、ごめん。だってシカクちゃん歩くの早いんだもん。ところで、何見てたの?」
A「ああ。あれだよ(さっきまで見ていたものを指す)。」
B「あぁ!さすが田舎だね。こんなの普通に見られるなんて! ほんとすごいなぁ。」
A「ねえ、ねえ。次どこ行こうか!?」
B「シカクちゃん、この旅費は会社から出てるんだから、ちゃんと仕事もしなくちゃ。」
A「そうだね。」
B「そういえば、猟師さんの方は捕まった?」
A「うん。ばっちり。」
B「腕は利くんだろうね?」
A「大丈夫。もともとコレクターだったらしくて、細かい仕事するよ。」
B「そうか。それならよかった。必要なものは揃ってるの?」
A「うん。道具の方は彼の愛用のもの持ってくるって。やっぱり、こだわりの強い人で消毒とか材料も色々指定されて大変だったよ。」
B「まぁ、その分よいものが出来ると思えば。」
A「そうだね。ねぇ。僕、もう少しだけ、いろいろみたいなぁ。」
B「ふふふ。僕たちの目的のヒトガタヒネクレオトコには出会いたいね。」
A「幻のヒトガタヒネクレオトコかぁ!楽しみだなぁ。 どこに行けば会えるんだろ。」
B「ああ。こればかりは判らないね。田舎の歩き方にも書いてないだろ。」
A「(ぱらぱらとページを捲りながら)んー。そうだね。」
 「ヒトガタヒネクレオトコはヤンキーと同じ種類だったよね。」
B「そう。イナカ目グレ科ヒトガタヒネクレオトコ。グレ科の生物は貴重種だけど、まだ、ヤンキーは都会でも見られる方だね。」
A「ヒトガタヒネクレオトコは田舎でも滅多に見られないからなぁ。」
C 上手からふらふらとやってくる。
B それに気付く。
 「あ!マルちゃんあれ!」
AB 二人顔を見合わせて
「ヒトガタヒネクレオトコだ!」
A「え!? ほ、本物かな!?」
AB 嬉しそうにじろじろとCを見る。
C「オイ! 何見てんだよ!?」
A「わああ。怒ってるよぅ。」
B(二人でこそこそと)
「ほんとに本物かな。」
A「どうだろう。見た目はそっくりだけど。」
B「確かめないと分かんないな。」
C「何こそこそ喋ってんだぁ!?」
AB「ひゃあ。」
C「なんだ?おまえら? 俺に何か用があんのか?」
B「あ、え、ええ。じ、実は、僕らあなたのファンでして・・・。」
C「ファンだぁ?」
作品名:museum 作家名:ウエツグ上次