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A ほっとする。
B「読んでほしいって、珍しいですねぇ。はっは。」
A「あっ、あー。」
B「希少人類百科。ふむふむ。ほー。変わった本だ。(A奪い返そうとする) まてまてまて、読んであげますから。イナカ目グレ科ヒネクレオトコ。おお。これは私でも知ってるぞ。中々いないやつだ。珍しいやつですな。珍しいやつ。昔はここらでも時折見たんですがねぇ。最近はめっきりだ。隣に書いてあるヤサグレオトコとは昔友達だったんですよ。まぁ、カッパみたいなもんだな。(A無理やり奪い返す)あぁ、ああ、ああ。なにをするぅ!?」
A「読まなくていいです。読んでくれとも頼んでませんから。」
B「なんですか。せっかく、この白い紙朱肉色計画を中断してまで読んでさしあげたというのにっ。まったくまったくまったくだ。」
A「だから、僕はこの本を借りたいだけなんですって。というか、そんなことやってたんですか!?」
B「やっちゃ悪いですかぁ。なんの飾りっ気もないこの紙を、赤だか橙だかわからん色にするんですぞ。いいじゃないですか。真っ朱色だ。ははっ。」真顔に戻り、ハンコを押しにもどる。
A「んー。ああ。そんなことはどうでもいいんですよ!とにかくこの本を借りさせてください。」
B 無視して押し続ける。
A「まったく聞いてないな。」
B いきなり手を止める。
「あ。そういえば。(男の方を見る)知ってますか、その本に書かれている希少人類の名前を考えたのは全部同じ人間なんだそうですよ。」
A「へぇー。」
B「どれも安直で分かりやすい名前ですよね。見たまんまをそのまま言っただけの名前ばかりだ。たぶん、何も考えず思い付いたまま付けたんだろう。」
「そう思うとあなたも、ずいぶん珍しい。」
A「そうですか?」
B「そうですよ。こんな本、今や誰も借りたりしませんし。ここに書いてある希少人類たちを信じる人もあまり聞いたことがない。 はは。あなた自身も希少人類みたいなものだ。どれ、私が何か名前を付けてあげましょう。」
A「へ?」
B「そうだな。珍しい本借りたがり男。ってのはどうですか。安直で分かりやすくていいでしょう。ははは。」
A「いや~。どうですかといわれましても・・・。」
B「なに?気に入らないですか? まあ、気に入らなくてもいいですけどね。」
A「気に入らないとかでなくて、そもそも僕は希少人類ではないですし。あ、あと何であなたに名前決められなきゃならないんですか!」
B「まぁ、気にしないで下さいよ。ただの思いつきだ。じじいの戯言(たわごと)ですよ。」
A「はぁ。」
B「ああ。そうだ、あなた。さっきから本を借りたがってましたけど、私ここの職員じゃあないんですよ。」
A「え?」
B「それと、その本、書庫リストには載って無いですから、勝手に借りてどうぞ。また、いつでも返しに来ればいいから。」
B「は!!」何かに気付いたようで、一目散にはける。
A「(少し戸惑いながら)どうしたんですか!?」Bを追いかけはける。
暗転
明転
職員らしき人物が入ってくる
C「どこ行きやがった。あのじじい!(机に手を置き、紙を持つ)なんだこれ?真っ赤ぁ!かぁ?」
暗転