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20日間のシンデレラ 第1話 やり直したい過去がある

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夏 美  「あぁ花梨ね。 今、東京で一人暮らししてるよ。 仕事が忙しくていつ帰って来れるかわからないんだって」

  陸  「そっか・・・・・・東京か」

夏 美  「何? 花梨に会おうとしてるの? そっかー二人とも、仲良かったもんね。 あ! あたし連絡先知ってるよ。 教えたげよっか?」

いじわるそうな目をする夏美。

複雑な表情の陸。

  陸  「いや、いいよ。 さんきゅ」

夏 美  「そう・・・・・・」

少し残念そうな夏美。

再び歩き出しながら、
            
  陸  「みんなー」

大きな声で呼びかける陸。

陸の方に注目する一同。

  陸  「悪い俺、今日は帰るわ」

驚く一同。

陸に近づいていく清水。

清 水  「は? 何言ってんだよ陸。 まだこの後、飯も食いに行くんだぜ」 
  
  陸  「あぁ……悪い」

清水の前をそそくさと通り過ぎて行く陸。

苛立っている清水。

陸を睨み付けながら、

清 水  「池田の事か?」 

沈黙の後少し遅れて、     
     
  陸  「そんなんじゃねーよ」 

小さくつぶやき、校門に向かう陸。

離れていく陸をみつめる清水。


〇小学校 校門前


とぼとぼと出て行く陸。

  陸  「会える訳ねぇよな」

しばらく歩いて立ち止まる。

小学校の方を振り返って、

  陸  「一番、変わってないのは俺か……」


〇恵子の家 玄関(数日後)


インターホンを鳴らす陸。

普通の住宅街の中、一際異彩を放つ大豪邸。
    
がちがちに固まっている陸。 

  陸  「(なんつー家だよ、あいつお嬢様だったのか……いかん緊張してきた)」

きょろきょろと辺りを見渡し、明らかに怪しい陸。

インターホンから声が聞こえる。

恵 子  「はい」

どきっとする陸。

  陸  「あ…あの、出雲という者なんですけど恵子さんはおられますか?」

恵 子  「出雲?」

恵子だとわかり急に安心する陸。

  陸  「恵子か……ったく変に緊張したぞ。 お前タイムカプセル開けれなかっただろ? だから手紙もって来てやったんだよ」 
  
恵 子  「帰って、今忙しいの」

予想外の返事に一瞬とまどう陸。

しかし手馴れたように状況を立て直して、

  陸  「そうか恵子は忙しいのか。 せっかく駅前のコロッケ屋で出来たてホカホカのやつを調達してきたってのに。 仕方ない、これは俺がおいしく頂いて……」

陸が話し終わる前に、目の前の門が大きな音を立て勝手に開いていく。

呆然とその光景を眺めている陸。

  陸  「はは…単純だな、あいつ……」

苦笑いを浮かべ玄関へと入っていく。


〇同・客間

      
クラシックが心地よい音量で流れている。

陸と恵子を挟む大きなテーブル。

恵子の目の前に陸から預かった、手紙が置いてある。
     
コロッケを満面の笑みで食べている恵子。
      
部屋着とは思えない高そうな黒いサテンのドレスを身にまとい、椅子の上にだらしなく

あぐらをかいて座っている。
        
 陸  「(一体どこが忙しいんだよ…)」

呆れた様子でその光景を見ている陸。

視線に気付き一瞬、陸の方を向く。

全く感情のこもっていない口調で、

恵 子  「あ、久しぶり」

よっと軽く手を挙げるとすぐに食べるのを再開する。

また満面の笑みに戻る。

  陸  「俺さぁここ最近、小学校の時の色んな奴に会ったけど、お前ほど変わってない奴は知らんぞ」

恵 子  「あんたに言われると何かむかつくわね」

コロッケを食べ終わり口を拭きながら、冷静な表情に戻る恵子。

恵 子  「それに……」

一瞬、遠い目をする恵子。

独り言のようにぼそっと、

恵 子  「全く何も変わってない訳じゃない……」
      
お互いしばらく無言になる。

なり続けていたクラシックの音が余計に大きく聞こえる。

少し重たい空気。

  陸  「けどお前、やっぱ身長の低さは相変わらずだよな」
 
大げさにげらげら笑って空気を変えようとする陸。

急に立ち上がる恵子。

ドレスをひらひらと揺らし、無言で陸の元に近づいていく。

目の前でぴたりと止まる。

ぱーんと強烈な音が響く。

    ×           ×           ×

恵 子  「大トカゲのムニエルでいいわね」

陸の返答を聞く前に、扉を開けて客間を出て行く恵子。

  陸  「なんつー怪しいものを食わそうとしてやがるんだ、あいつは……」
 
赤く手形の跡がついた頬を手でおさえながら、打ちひしがれている陸。
  
ふーっとため息をつく。

室内を眺める陸。
      
高そうな絵画や骨董品が沢山置かれている。

その中で周りと全く釣り合ってないファービー人形が一体、一際違和感を放出しながらぽつんと置かれている。

くすっと笑い不思議そうに首をかしげる陸。

ふと一部を見つめる。

  陸  「本棚か」

椅子から立ち上がり、本棚に向かう。

色んな分野の難しそうな本が並べられている。

自分には理解できないと顔をしかめる陸。

視線を下に向けると、同じようなタイトルの本が沢山ある事に気付く。

(黒魔術の基本)

(黒魔術の儀式)  

(黒魔術 禁断の書 過去に戻る方法)

  陸  「過去……」

一冊の本を手に取りまじまじと表紙を見ている陸。

大きな魔方陣が描かれている。

首をかしげながら、

  陸  「たしか黒魔術って西洋で生まれたって聞いた事があるような……」

著者の名前が目に入る。

(山田太郎)

こけそうになる陸。

  陸  「完全に日本人だよな……山田太郎……怪しすぎる……」

苦笑いを浮かべる陸。

半信半疑でゆっくりとページをめくる。

ぎっしりと埋め尽くされた細かい文字が姿を現す。

しばらくして突然、本をめくる手の動きが止まる。
  
そして目の色を変えて再び再開する陸。

ページをめくる速度も速くなり黙黙と読書を続けている。
    
なり続けるクラシック。

    ×           ×           ×
  
急にドアが開き、恵子がケーキと紅茶を持って入ってくる。

びくっとなる陸。

本を手に持ちながらあたふたしている。

  陸  「あ…これはその……」

テーブルにケーキと紅茶を置き、椅子に腰掛ける恵子。

恵 子  「座ったら?」

さっと、陸に椅子に座るよう手を差し出す恵子。

手に持っていた本を元の位置に戻し椅子に腰掛ける陸。

しばらく沈黙が続く。

紅茶を一口含み、カップを皿の上に置く恵子。

ふーっと軽く息を吐きながら、

恵 子  「さて一体、何を見てたのかしら?」

手に顎を乗せて、いじらしい目で陸を見つめる恵子。

目線を下に向けている陸。

しばらく経って意を決したように、

  陸  「なぁ……」 

恵 子  「ん?」

真剣な眼差しで恵子と目を合わせる陸。

  陸  「黒魔術は過去に戻る事ができるのか?」

お互い沈黙。