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20日間のシンデレラ 第1話 やり直したい過去がある

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陸(語り) 「俺は多分恐れている…………果たして自分があれから前に進めているのかという事に」


〇小学校 裏庭


勢いよくスコップが地面に突き刺さる。

前 田  「よいしょっと」

地面に穴を掘る前田。

前に飛び出たお腹を気にもせず、俊敏な動きをしている。

その前田の周りを男女含め十人程が囲んでいる。

ざっと旧友を見渡す陸。

  陸  「なーんか、何も変わんねーのな。 みんな」

清 水  「そうでもないぞ」

清水に視線を向ける陸。

清 水  「ほら、夏美なんかもう二人も子供がいるみたいだし」

  陸  「まじかよ! くーっ、昔はちょっとエロイ事言っただけで涙目になってたような奴なのに、今じゃママとはね」

清 水  「俺らが知らないだけで変わってるんだよ、きっと」

清水がその場にしゃがみ込み、穴を掘っている前田を見つめる。

清 水  「お、陸。 一度確認してみろよ」

  陸  「は? 何を」 

清 水  「前田だよ、前田。 もし昔と変わってなかったら後ろからカンチョーしても、あの名言を吐くはずさ」 

  陸  「はは・・・・・・なるほど。 で俺にやれと」

清 水  「かつてスナイパーと呼ばれていた男の実力がなまっていたら、話は別だけどな」

  陸  「まさか」 

自信に満ちた表情で前田の背後にしゃがみ込む陸。

前 田  「ふーっ、なかなか出てこないな」

額の汗を拭い、作業を続ける前田。

前田の尻が上下に揺れる。

その様子を凝視している陸。
  
  陸  「今だ!」

陸の二本の指が前田をとらえる。
   
スコップを動かす手が止まる。

前 田  「うっ……さばの…味噌…煮……」

苦しんでいる前田。

腹を抱えて笑い転げる清水。

続けて笑う陸。

お互い顔を見合わせて、

清 水  「変わってない」

  陸  「痛さを紛らわす為に、好きなおかずを言うところ」

何とか立ち上がり、スコップを振り上げる前田。

前 田  「陸ーこの野郎!」

  陸  「待て前田、話せばわかる。 てかスコップはまずい」 
     
陸を捕まえようとする前田。

その光景を見て余計に笑い転げる清水。

夏 美  「あ、タイムカプセル」

夏美が前田の掘っていた地面を指差す。

(一同) 「え?」

それぞれ騒いでざわざわとしていた空気が、一瞬にして静かになる。

     ×           ×        × 

何重にも袋を被せたタイムカプセルが地面に置かれる。

砂が沢山こびり付いて、袋が茶色くなっている。

(一同) (おーっ!)

全員が歓声をあげて、目をきらきらと輝かせている。

前 田  「へへっ、これは僕が掘ったんだぞ」

腕を組みながら自慢げにしている前田。

みんな、前田を無視してタイムカプセルに近づいていく。

一人ぽつんと残された前田。

前 田  「お……おい」

袋をやぶって中身を取り出す陸。

黄色い箱が姿をあらわす。

ふたの表面に

(6年4組☆ タイムカプセル)

と書いてある。

その周りにそれぞれの生徒のメッセージや名前が書いてある。

自分の名前を発見する陸。

メッセージも何もなく、ただ飾り気のない名前が書かれているだけ。

  陸  「(もっと何か書けよ、俺……可愛げのない小学生だな)」 

ふたを開けるとその裏側に 

(米川竜也です)

と大きな字で書いてある。

みんながそれを見て爆笑する。

清 水  「米川ーお前、一人だけ目立ちすぎだろ」

清水が隅の方にいた米川を連れて来て、その文字を見せる。
         
米 川  「あれー俺、こんなこと書いたっけな」

首をかしげて照れている米川。

笑い声が響く。

清 水  「ホント久しぶりだなーお前、今なにやってるんだよ?」

綺麗にセットされた髪、さわやかな笑顔。

高そうなスーツを身にまとっている米川。

米 川  「あぁ、ある事業を始めたんだけどそれがいい感じでね。 必ず米川カンパニーを実現させてみせるさ」

清 水  「米川カンパニーって小学校の頃、言ってた……何かお前なら本当にできそうな気がしてきた……」

一方、真剣な眼差しで一人タイムカプセルに書かれた文字を見つめている陸。

一瞬表情が曇りため息を吐く。

それに気づく清水。

米川との会話を中断して陸の方へ向かう。

清 水  「陸!」

急に声をかけられて、ふと我に返る陸。
  
清 水  「何やってんだよ、早く中の手紙とりだそうぜ」

  陸  「あぁ……すまん」

箱の中にある、青い袋で包まれたものを取り出す陸。

破ると中から透明な袋がでてきて、その中に沢山の手紙が入っている。

  陸  「よし、じゃあ配るからな」 

一人一人、手紙を渡していく陸。
      
手紙の差出人の名前を見つめる陸。

(佐々木 恵子) 

  陸  「今日、恵子は来てないのか?」

夏 美  「うん、見てないよ」

  陸  「そっか、じゃあ後日渡しに行ってくるわ。 俺だったらまだこんなだし時間あるから」

夏 美  「了解」

にこっと笑うと少し離れた女子が集まっている方へ歩いていく夏美。

みんなそれぞれ手紙を開けて、盛り上がっている。

陸も自分宛の手紙を封筒から取り出す。

突然、ちりんと陸の耳に鈴の音が聞こえる。

音の鳴る方を見ると、塀の上から首に鈴を付けた黒猫が陸を見ている。

視線を逸らさない黒猫。

不思議そうな顔をしている陸。

  陸  「何だよ……」

にゃーっと返事をするように鳴く黒猫。

再びちりんと鈴の音を鳴らして、すばしっこく去っていく。

ぎらぎらと太陽の光が当たる。

しばらく一人、何もしないで突っ立っている陸。

気を取り直して手紙を開け、ゆっくりと読み始める。
      
(未来の出雲陸へ  やっほーお元気ですか? 俺の事だからどうせあんまりいい仕事してないだろ。 過去の
俺はお前の事がすごく心配で夜も眠れないよ。笑)

苦笑いを浮かべる陸。

  陸  「(やっぱ馬鹿だな……俺)」

(夢は? 友達はちゃんといる? あと正直一番心配なのはこの事だけどさ……お前まだ花梨の事、抱え込んでない?)  
     
急に真剣な表情になる陸。

(わかってると思うけど、俺あいつにひどい事言ったんだ。 お前なんかとっとと転校しやがれーって。 本当は転校して欲しくなくて仕方がなかったのにさ。 ほんと馬鹿だよな俺って。 その後いつの間にかあいつの席は空いたままになってて、もう会う事も謝る事も出来なくなった。 なぁ十年後の出雲陸はもっと頭よくなってるよな? もう花梨に謝ってるよな? 俺はお前を信じるよ。 ま、そうゆう事だから。 元気でやってくれよな。 じゃーなバイビー) 

手紙を仕舞う陸。

近くの木でセミが鳴いている。

ぼうっとそれを見つめる陸。

     ×           ×           ×

ゆっくりと歩き出す。

楽しそうに話している夏美の方へ近づく。

  陸  「なぁ花梨は今、何してるか知ってるか?」