察人姫-第壱話-
「ギャラ……?」
「イエス!つまり報酬、見返り、お駄賃!」
ポカンとする校長にソラは拳を天井に突き上げて言う。
卒業生と言えども、事務所を構えていないといっても探偵として依頼を受けたのだから当然の権利であるが、どうもこの校長はそれについて失念していたようだ。
「希望を聞こうか、ソラ君」
そんな校長に代わって訊ねる理事長。
どこか楽しそうである。
「事件一つ解決につき諭吉さんを私とユーイチに二人ずつ!あと交通費とお弁当を一週間分。これは必要経費で」
「ほう、中々リーズナブルじゃないか」
「り、理事長?」
微笑みながらウンウンと頷く理事長に校長は戸惑う。
「いいだろう。しかしそれでは安すぎて申し訳ないな……よし、では儂のポケットマネーから五万を出そう。経費にでも遊びにでも好きに使ってかまわんぞ」
「やたっ!ツトムちゃんカッコいい!」
ポンッと軽く出された五枚の紙幣を受け取りガッツポーズをするソラ。
「理事長……」
「構わんだろう?それに楽しみじゃないか。四年前のようでな」
それ以上校長は何も言わない。
何も言えなかった。
「それじゃ契約成立ってことで」
「ああ、よろしく頼むよ」
契約成立。
それを確認するように、五万円で自分を扇ぐように遊んでいるソラを尻目にユーイチは立ち上がり、理事長と握手を交わした。