察人姫-第壱話-
保澄学園へ向かう道中。
「そう言えば食堂で気になっていたんだが……なんでお前達の弁当の中身が同じなんだ?二人とも一人暮らしなんだろう?」
「ああ、いつも僕が作ってるんですよ。僕が食事担当でソラが掃除と洗濯。他は各自で……」
「ちょっと待て!」
普段なら突っ切る黄色信号を前にブレーキを踏んで停止した早坂はユーイチの言葉を遮り、振り返る。
「……お前ら、一緒に住んでるのか?」
「ええ、まあ」
恐る恐る訊ねる早坂に、ユーイチは特に気にした様子もなく答える。
「ああ、一応言っておきますけど僕らの関係は高校時代と変わりませんよ。間違っても恋人同士だなんてことはないですから」
「だよね、ユーイチと付き合うなんて考えられないし。えっと関係は……幼馴染みで親友で……あ、でも学年が違うから先輩後輩でもあるよね」
青になったよ、と付け加えてソラはユーイチの後に続く。
「いや、そっちの方が不自然なんだが……。親御さんは何も言わないのか?」
「ええ、むしろ『ソラをよろしくね』とまでおばさんにお願いされる始末で……今度来て下さいよ。僕らも成人ですし、一杯やりましょう」
「あ、ああ……」
これ以上追及しても逆に混乱するだけだと早坂は半ば諦め、車を走らせる。
それから二十分後、ソラ達は母校である保澄学園に到着する。