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察人姫-第壱話-

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「……理由を聞こうか」
 ソラとユーイチの言葉に動じることなく寅田は二杯目のお茶を口に含んでから二人に言う。
「この事件……じゃなかった。あ、でも、ええと……」
「事件でいいだろ。話が進まねぇ」
「うん、そだね。この事件ってさ、正直トラちゃん以外にはできないんだよね」
「そうなのか?」
「うん。あ、いや、正確にはツトムちゃんや被害にあった全部活の顧問もしくはキャプテンがグルなら可能だけど……ツトムちゃんはアリバイがあるし、後者は論外。だからトラちゃんなんだよ」
 不安そうな表情の藤村以外は誰も表情を変えない。寅田も続きを促すようにソラを見据える。
「トラちゃん、部室の合鍵……持ってるよね?以前管理してたのがトラちゃんって聞いてるよ」
「……湊川のボウズか。ああ、持ってる。全ての部室の合鍵は手放す前に作っておいた。家の簡単な金庫で保管している」
 その寅田の言葉にユーイチは安堵のため息を吐く。これに関しては時間の関係で全くウラが取れておらず内心ヒヤヒヤの推測だったため、ソラも僅かに表情を和らげる。
「うん、ならこれで鍵についての問題はクリアってことで……話、進めていいかな?」
 小首を傾げて同意を求めるソラに寅田は小さく頷いた。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司