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察人姫-第壱話-

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「収穫はなし……か」
「そだね、別の見方を考える必要があるけど……今日は疲れたよ」
「今日は始まったばかりだけどな」
 その後、センサーに抜け道はないかと学園内の地図を活用しながらルートを探った二人だったが、結局超人的な動きでもしない限り侵入することは不可能だという結論に至ったところで深夜の調査は終了となる。





「ったく、いきなり散財かよ」
「仕方ないよ、迎えを頼める人なんていないんだし。それに経費としてツトムちゃんから貰えば大丈夫だよ」
「タクシーは別だろ。第一夜中に無断で学園に侵入した時点でアウトだろ」
 ソラやユーイチの住むマンションの最寄り駅となる渡貫(ワタヌキ)駅近くのコンビニで買ったフライドチキンを誰もいないバス停のベンチで食べる二人。
 保澄学園から渡貫駅までは車で三十分以上かかり、結局二人はタクシーを呼び、帰宅することになった。
「ユーイチ、いま何時?」
「三時だな、もちろん午前。夜食も済ませたし、そろそろ帰ろうぜ」
「そっか、小テストだっけ?」
「ああ、一限からな」
 あと五時間もすれば家を出て大学に行かなければならないユーイチは早く帰宅し、睡眠を取りたい気持ちでいっぱいだったが、ソラはベンチから立とうとはしない。
「ユーイチ、先に帰って寝てて。私はもうちょっと考えておきたいから」
「明日……ってか今日の昼からでいいだろ」
「ダメ、寝たら色々忘れそう。家に着いたら寝ちゃいそうだし……」
 そう言うソラは手帳に箇条書きで部室荒らしの事件についての様々な可能性についてメモをしている。動機を持つ者、学園に侵入できる者、鍵を開ける方法、荒らした部室の順番など、思いついたことを次々と書いていく。
「……ここじゃ書き辛いだろ。どっかテキトーな店入るぞ」
「寝なくていいの?」
「前科があるからな、お前を置いたまんまじゃ寝れねーよ」
「ありがとね、ユーイチ」
 そうして朝日が顔を出すまで、二人は近くのファストフード店で事件についての整理を続ける。そして一区切りがついた段階で二人は帰宅し、ソラは就寝、ユーイチはシャワーを浴びて大学に向かった。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司