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察人姫-第壱話-

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「迎えなんていつ呼んだのさ、ユーイチ」
「テレパシーに決まってんだろ」
「ふーん、じゃあ何で校門で待っとかないのかな?」
「待ってても無駄だから……そうだろ?」
「嘘つきは泥棒の始まりだよ?」
「僕は帰りたいんだよ。なんなら今からでも帰るぞ」
「嘘だよっ、嘘嘘。いやー、ユーイチみたいな最高の友達を持って幸せだよ。ありがと、ユーイチ」
「はいはい」
 学園の外縁を歩きながら交わされる二人の会話。
 時刻は深夜一時を回り、山の中に建てられた保澄学園の周囲には人っ子一人いない。
 車も走っておらず、街灯も申し訳程度に備えられているだけだ。
「さてと、これだけ人がいなけりゃ夜中に侵入しても目撃者はいないと思うけど……どう思う?」
「それでも外部犯の線は薄いよ」
「だな、僕も実際に見て痛感したよ」
 二人の視線の先には学園の敷地内に置かれたいくつものセンサー。
 これは見回りの警備員が帰宅する前に作動させておくものであり、朝四時まで切れないようにしている防犯センサー。そのセンサーは赤外線で侵入者を察知すると警報を鳴らし、電気をつけて侵入者を威嚇し、警備会社に連絡が入るシステムになっており、一度センサーが作動されれば侵入はほぼ不可能となる。
「トラちゃんの話じゃ事件日も作動されてた記録も会社に問い合わせたらあるらしいし、もちろんセンサーが何かを感知した記録もない。藤村さんの見回りは完璧……これじゃ犯行時間は多くて一時間半ってとこかな?」
「もしそうならお手上げだな。一時間半であれだけの部室を荒らせるわけがねぇ」
「外部犯、内部犯っていうかそもそも犯行自体が不可能に思えてきたな」
 調べれば調べるほど可能性は狭まり、二人の推理は行き詰まる。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司