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察人姫-第壱話-

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「えっと……ああ、そうだ。見回りの順番は校舎から始めて体育館、ホール、各グラウンド、プール等を回って、最後に部室棟なんですね?」
「ああ、ここ十年ほどその順番に変更はない」
「事件があった日……まあ前日になりますけど、その日も同じですよね?」
「その筈だ。そうだな?藤村」
 ユーイチの問いに学園内の地図を眺めながら寅田は頷き、事件時の見回り担当であった藤村に確認する。
「はい、チェック表の順番通りッス。確かにこの順番で見回りしました」
 そう言ってA4の紙をユーイチに渡す藤村。そこには見回りでチェックする場所が書かれており、確認できたらチェック項目の隣の小さな欄に印を入れる仕組みだ。
「……見回りはいつも一人なんですか?」
「研修期間は二人だけど、基本的には一人……まあ、たまに寅田さんが警備室で月見酒してるけど、見回りは一人でやってるかな」
「事件日はどうでした?」
「一人だったよ。寅田さんもいないし、見回りも特に変わったことはなかったよ」
「ちなみに藤村さんは何時まで学園にいましたか?」
「大体……十一時半くらいかな。テレビを最後に切った時、いつも録画している番組のエンディングだったから」
 この後、主にユーイチが様々な質問をしたが、特に手がかりになるような情報は得られず、再びプロ野球談義に入りかけたところで二人は警備室を出る。
「雑談をし過ぎたな……大半の部活が終わってるし。とりあえずまだ練習してる部だけでも聞き込みするか?」
「聞き込みはまとめてしたいから明日にしよ。とりあえずご飯にしよ。おなか空いちゃった」
「そんなんでいいのかよ?」
「おなかが空いたら食べる。別におかしいことないよ。それに、食べて体力つけておかないと……今日は一晩中付き合ってもらうんだから」
「……マジで?よりによって今日?」
「うん、今夜は寝させないんだから」
 そう、ソラはユーイチの手を握り、意地悪な笑みを浮かべて言った。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司