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察人姫-第壱話-

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「相変わらずチビのまんまだな、お前さんは」
「うっ……お酒飲める歳になったもん」
「おう、そうか。なら一杯いくか?ボウズはどうだ?」
「僕は構いませんけど……仕事中でしょ?藤村さん、いいんですか?」
「俺も一杯もらっていいッスか?」
「藤村さん!?」
 理事長の友人にして警備員のトップ。剣道二段に空手は初段で警備員になる前は県警で勤務。アンチ阪神の横浜ファン。趣味は筋トレと草野球。
 それが寅田宗彦という男であり、生徒からの人気は非常に高い。





「……ってことだかんよ、今年は最下位脱出だろ」
「あんまり変わらないと思うんスけどね、俺は」
「僕も藤村さんに同感です」
「ねえ、ロッテは?」
「いや、今セリーグの話だし」
 何故か、いつの間にか始まったプロ野球談義。
 寅田は横浜に期待を抱き、藤村は冷静に分析し、ソラはいまいち会話に入ることができてない。
「……って、脱線しすぎでしょ」
「うるせえな、確かにあの監督の退任にはワシも残念だが……今年は諦めろ」
「いや、だから聞きたい話は別にあって……」
 中日ファンのユーイチとしては振られた話題を掘り下げたかったが、そこは我慢して本題に話を戻す。
「部室荒らしの話です」
「あっ……」
「そうだった……」
「おお、すっかり忘れてたな」
 野球部の部室の話から何故かプロ野球談義になっていたことに全員が気づき、藤村は出勤簿を開き、ソラは手帳を開き、寅田はスポーツ紙を折り畳んだ。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司