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察人姫-第壱話-

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「たのもー!」
「急に大声出すなよ……」
 教室一つ分ほどの小屋のドアを勢いよく開けるソラと片耳を押さえてソラの頭を小突くユーイチが入ったのは警備室。
 普段は監視カメラと正門、裏門に立っての警備と夜中の学園内見回りを主な業務としており、大会などのイベントで学園内の施設が使われる際には車の誘導なども行っている警備員計八名が使う部屋である。
「…………え、えっと……」
 派手な登場をしたソラだったが、警備室には警備員が一人しかおらず、しかもソラやユーイチの知らない二十代中頃と思われる若い男性だった。
「あ、あれ……?」
「……どうすんだよ、この空気」
 なんとも言えない雰囲気が警備室に漂う。
 しかし困惑していた若い警備員が本来の仕事を思いだし、二人に名前と目的を問い、入校許可証の提示を求める。
「あ、そう言えばツトムちゃんから渡されてたっけ?」
「ああ、前金と一緒にこの封筒に……はい、これです。用件は部室荒らしの件で……」
  ユーイチが二人分の許可証を提示し、部室荒らし事件について説明すると若い警備員は二人を部屋の奥にある応接スペースに案内する。





「えー、じゃあオサムちゃんもタムラのじーちゃんもヨッシーも辞めちゃったんだ……」

「まあな、年齢が年齢だから仕方ないさ。今は俺みたいな若手……まあチームのメンバーだけど、そっちの方が多いから」
 藤村駿太郎。
 この警備員の名前だ。
 彼は保澄学園出身のプロ野球選手であったが、四年目の昨年に自由契約……つまりはクビになり、現在は警備員を勤めながらとある独立リーグのチームに所属し、再びプロ野球に返り咲くことを目指しているとのこと。
 そんな藤村の話によると、ソラやユーイチが高校生の時に関わった警備員の大半が高齢や体調などの理由により辞めているとのこと。
「じゃ、じゃあトラちゃんは?」
「えっ?あー、寅田さんか」
「もしかしてポックリと……」
「くたばってねーぞ、チビ助」
 不謹慎なことを言いかけたソラを制したのは白い髭を蓄えた色黒の老人。
 藤村と同じ警備員の制服を着ているが、色が大分薄くなっており、ベテランであると伺える。
 そして、その老人の名は寅田宗彦(トラダムネヒコ)。
 ソラとユーイチが早坂と同じように、かなり“お世話”になった男である。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司