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察人姫-第壱話-

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「なるほど、事件の捜査ですか」
「ああ、またこのバカが安請け合いしてな」
「すみません、どうしようもない姉で」
「いいって。慣れてる」
 拗ねてバスケ部の練習を眺めているソラに代わってユーイチがアタルに事情を話す。
「学校側が通報しないということで生徒会でも事件について調べているんですが、収穫なしで……」
「まあそうだろうな。こっちに頼む前にまずは学校側が調査してるはずだからな……とりあえず分かってる範囲で話を聞かせてもらっていいか?」
「はい」
 それから始まるアタルの説明によると、部室荒らし事件において被害を被ったのは武道系の部活と文系の部活以外全てで、いずれも部室内の備品が壊されていたという。
 そして部室が荒らされた日は五月六日。
「つまり犯人は一日……いや、一晩で二十程の部室を荒らしたってことか。単独犯の可能性は考え辛いな」
「はい。徹夜でも不可能です。しかも七日は大半の部活が早朝練習だったらしいので、犯行時間は見回りが終わる十一時から陸上部の早朝練習が始まる六時だと考えると七時間。まあ実際はもっと短いと思いますけど……」
「そうだな。けど犯行時間より問題なのは……」
「鍵……ですよね?」
「ああ。保澄学園において部室の鍵はそれぞれ三つずつ。一つは顧問が、もう一つは主将が、そしてあと一つは理事長が管理しているんだったな?」
「はい。そして理事長はいつも部室の鍵は持って帰ります。もちろん犯行があった日も」
 荒らされた部室に共通することは窓もドアも壊れていないということ。
 また、全ての部室を施錠したことを見回りの者が確認している。
 つまり、部室を荒らした犯人は鍵を使って中に入ったということになる。
 それがユーイチとアタルを悩ませた。



作品名:察人姫-第壱話- 作家名:朝朽 司